星組は人事上手な組だと思う話

 

宝塚は一つ、なれど、

人事一つ取っても五組それぞれのカラーがありますよね。

 

例えば花組は同時就任同時退団がほとんど無く、

超路線の娘役は他組に出しちゃって、

自組のトップ娘役には不思議な人選をしがちである、とか。

 

月組は早期就任が大好きで、全体的に予定調和を嫌い、

それが良い方向に転がれば良いけれども、

そうでなければ「サイコパス」と揶揄されるレベル、とか。

 

雪組は一人っ子政策が有名で、

路線と別格候補以外はとっとと辞めてしまう人が多いし、

10年に1度くらいヘンテコ人事をして流れを壊す、とか。

 

宙組は一生懸命路線を作るんだけれども、

生え抜きスターが2番手に上がりそうなタイミングで

いつも他組から御曹司系スターがやって来てその立場をかっさらう、とか。

 

※全て平成宝塚以降の人事のお話です。

 

敢えて鋭い言葉を選んで書きましたけれど、

これらに比べると星組は人事上手な組だよなぁとつくづく思うのです。

 

星組は人事上手な組だと思う話

 

星組が人事上手だと思う点はいくつかあって、

 

①番手に上げる路線の選別が、ファンの好みと一致している。

(つまり「なんでお前が」があまり起きない。)

②上げると決めたら躊躇いなくとっとと上げる。

③路線落ち、別格組にもちゃんと花を持たせる。

④路線選別に迷いが無いので、空いたリソースを上手に使える。

 

という感じでしょうか?

 

モデルケースは次に取っておくとして、

そもそもトップスターの変遷を見ても「上手だな」と思うんですよね。

 

礼真琴就任前まで、星組は生え抜きと外様が順番に就任するという

「偶然」が起きていたのを皆さんご存知でしょうか?

 

その外様にあたる人たち、すなわち、

香寿たつき、安蘭けい(と遠野あすか)、北翔海莉の共通点は

いわゆる苦節〇年の苦労人系スターであることでしょう。

 

それはつまり、星組が計画的にスターの育成を行う最中で、

スポット的に上級生スターを受け入れているということになります。

 

その一方で、星組はその期間を上手に

次期トップの育成に当ててきた(柚希・紅)わけですから

人材と時間の使い方が上手だなぁと思いますよね。

 

人事上手なモデルケース

 

例えば、真彩希帆の場合。

当時の星組は北翔海莉の落下傘が決定し、

受け皿として妃海風の登板も決定。

次期は紅ゆずると綺咲愛里であることも薄々分かっていた時期でした。

 

これはすなわち、星組的にはリソースが割けるということですので、

花組からやって来た彼女にバウ主演2回と新公ヒロイン1回をあげて育成し、

たった2年で「頑張れよー!」と雪組へと送り出してあげたのでした。

 

雪組繋がりで言うと、桜庭舞。

雪組時代の彼女はヒロイン候補でも何でも無く、ただの下級生の1人。

組替えも「なんで?」って感じでしたよね。

 

まぁせっかく星組に来たんですし、と

『デビュタント』で少し目立つナタリー役を振った後は元の立ち位置に戻しつつ、

最終的には新公ヒロ、エトワールと目一杯のプレゼントを渡し、

退団への道筋を飾ってあげたのでした。

(惜しむらくはコロナの影響で退団公演が半分しか出られないこと。)

 

男役で言うと、麻央侑希七海ひろきでしょうかね。

麻央侑希は94期の初詣ポスターを飾り、期待の若手としてデビュー。

 

だけれども、新公卒業後はほぼ立ち位置が変わらず、

直接対決していた礼真琴だけでなく、

後年は瀬央ゆりあにまでさらりと抜かれてしまいます。

 

が、後年も階段降りから外れることは無かったし、

ポジション比重もずっと路線候補的量で変わらなかったので、

路線落ちという悲壮感がほとんど無く、

星男らしいキラキラを放ちながら晴れ晴れと退団していきました。

 

七海ひろきは組替え直後から礼真琴の下に置かれたことで、

伸び伸びと限り無く別格に近い路線という立場で活躍出来たと思います。

 

人気スターとして、89期の1人として星組を牽引。

最後の最後で3番手羽根を背負い、よかったねという雰囲気で退団。

 

とまぁ、こう書くとすごーく綺麗に人を使ってるなと思いません?

 

良い人材をすぐに他組へ送り出す星組

 

そして星組のもう1つ大きな技として、

自組で上げるつもりは無いけれど、飼い殺すには勿体ない人材を

「早いうち」「少し自組で上げて」放出することがあります。

 

例を挙げるならば、

芹香斗亜、華雅りりか、城妃美伶、綾凰華、天彩峰里、などでしょうか。

 

星組内でモブAでタカラジェンヌ人生を終えるより、

他組で活躍させてあげたいという親心だと私は思うのですが、

以前「中途半端なスターをぶん投げてばかり」というコメントを頂き、

見る人によってこんなにも印象って違うんだなと驚いたのでした。笑

 

でまぁ、なんでこの記事を書いたかって、

送り出された綾凰華が雪組で

面白いポジションにまで登りつめてるからなんですよね。

 

100周年前後の星組公演を見ていると、

天華えまと綾凰華って同学年なのに拮抗するように使われていたわけですが、

(『THE ENTERTAINER!』の冒頭とか)

結果的に自組に選ばれたのは、天華えまの方。

 

綾は同期の真彩希帆を支えてこーい!と送り出された一方で、

お披露目『ひかりふる路』、大作『ファントム』で新公主演を果たし、

気付けば全ツ2番手格にまで登りつめちゃったんだから凄いですよね。

 

これは本人の努力と、星組と雪組の利害が一致したがゆえの結果ですが、

星組の見切りの良さが第一歩だったわけで、

そういう意味でも改めて星組の人事上手さを実感したのでした。

 

やはり上手な『ロミオとジュリエット』

 

さて、星組は現在『ロミオとジュリエット』を上演中。

礼・愛月・瀬央の綺麗なピラミッド体制はもちろんのこと、

若手陣は複雑な役替わりで番手争いが起きていますね。

 

組替えでやって来て上手に「使われて」いる綺城ひか里、

最近圧され気味ながらもここでチャンスを掴んだっぽい天華えま、

キラキラ一直線のアンバサダーガール極美慎と、

この三つ巴が上手に横並びになっているのが面白いと思います。

 

上3人はしばらく変わらないでしょうから、

今後の注目点は下級生の三つ巴戦争。

 

長期と目される礼真琴の元でどのような番手争いが行われるのが、

上手な人事采配に要注目です。

 

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コメント

  1. MS より:

    放出した星組もですが、受け入れた雪組もすごいなと思いますね。
    綾凰華くんも、月組からきた朝美絢くんも、組替えでオーラが何倍にも増しています。
    綾凰華くんは、星組でのスカーレットピンパーネルの新人公演がターニングポイントですね。この新公の演出が生田大和先生でした。生田先生は、この新公でロペスピエールを演じた綾凰華くんに目をつけ、ぜひ、自分が演出をする雪組のひかりふる路で、新公主演をしてほしいと思ったとスカイステージで語っておられました。
    後に、組替えは急だったと語っていた綾凰華くん。雪組には路線の98期がいなかったことも幸いしましたね。
    蒼汰さんは組替賛成派ですよね。私も組替えは、下級生からも憧れる存在になりやすく、オーラが増してとてもいいと思います。
    なんか星組人事とは微妙に話がズレたかもですが、各組に、組替えしたらもっと伸びるんじゃないかなと思われるジェンヌさんいますよね。

  2. あやこ より:

    星組人事の安定感は、別格ベテラン娘役の活躍にも現れていますよね。
    有沙・小桜はもちろん、白妙・夢妃・音波の「美魔女トリオ」で、舞台が安定。大人のお色気コーナーもちゃんと用意してくる。(他組の同年齢だと、いじわる継母、ぶっ飛び家政婦、やたらキレのいいダンサー等、第一線を退いたような配役や起用が目立ちませんか?)
    他組の同世代が爆上げスタートの中、極美・天飛のエースを慎重に育成しているのも、好感が持てます。ファンへの配慮、切磋琢磨はもちろん、本人達も、自分の伸びしろを実感できるでしょうしね。
    (個人的には、この層に、諏訪とか真名瀬とか『ワンチャン別格路線』の歌ウマ中堅が参入して、礼氏とのギラギラハーモニーを奏でるのもオススメです、ご参考までに)

  3. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    しかし不思議なのですが、こういう路線人事は誰が決めているのでしょうね?いわゆる組プロデューサー?

    でも宝塚歌劇団も阪急と言う大資本の一部門で、組プロデューサーも一定年数で人事異動で別の部署に変わっていくと思うのですが、引き継ぎ書に「雪組だから御曹司一本釣り人事をするべし」と書いてあるのかなあ?

    抜粋するのは、スターにしてファンの注目というリソースを集約するため、

    抜粋されるには、そもそも下級生のうちから、文化祭を見にいくようなコアなファンがある程度ついている必要がある。

    と思うと、抜粋するのはいわゆる組に付く熱心なファンであり、スターや組カラーはファンによって作られるのかもしれませんね。

  4. あず より:

    蒼汰さんこんにちは。
    私は星組時代からの天彩峰里ちゃんのファンですが、ぶん投げられた感じは一切してないですねぇ。本公演の役付きはどこにいてもそう変わらなかったと思いますが、紅&綺咲ペアの新公をするよりはどう考えても真風&星風ペアが演じる演目の新公を刺せてもらえる方が峰里ちゃんの持ち味が活かせる、と思っていましたので組替えは嬉しかったです。
    本当は星組時代に風ちゃんの役もやってほしかったんですが、ほのかちゃんもきぃちゃんもいましたし難しいのは分かっていましたので、星組は上手く育てて送り出してくれた、と思います。
    きぃちゃんに関しては初めから望海さんの相手役にする事を想定して「北翔&妃海の歌うまペアの元で修行してこい」だと思っていましたので、やはり星組はよく育てた、きぃちゃんも星組の良さを十二分に吸収して期待に応え、万全の状態で雪組に来てくれた、と思っています。
    反面、私も知り合いから「星組はまともに育ててなくても上げると決めたら上げる組だよね」と言われた事があるので、人によって見方って本当に違うものですねぇ。
    なので私はよく「(上手いとか良い悪いは分からないけど)星Pとは気が合う」と言っています。笑

  5. ちょっこー より:

    星担としては今回みたいな記事ありがたいです!