今年の宝塚納めはこれで・雪組『愛の不時着』感想②

 

少し間隔が空いてしまいましたが、

雪組『愛の不時着』の感想続きを書いていこうと思います。

 

【前回の全体感想・朝美&夢白編はコチラ】

 

裏カップル・瀬央ゆりあ&華純沙那

 

2番手格であるク・スンジュンを演じた瀬央ゆりあ。彼女に似合う底抜けに明るいチャラついた役で良かったです。笑。あんな真っ白なスラックス履いて様になる人はそういないだろうし、青ジャケットがまぁ胡散臭いこと!!(褒めてます)

ぶっちゃけ、今回の脚本内容的にスンジュンはしどころの無い役(後述)だったと思いますが、それでも明るさの裏から誠実さが滲み出てたからこそソ・ダンとのカップルが成立していたと思いますし、それが彼女の技量なのだと感心しました。やっぱスター専科様が特出すると色の違いみたいなものが出て面白いですね。朝美絢との並びも新鮮で95期スキーとしては感動しっぱなしでした。

そして個人的MVPは娘2格のソ・ダンを演じた華純沙那ですよ!!すっごく良かった!!まずは化粧。彼女ってどちらかというと福福しいおかめ系統な顔立ちだと思うのですが、それがメイクと顔の芝居で全然真反対の雰囲気になってて驚き。キッ!!と睨みつける顔立ちがビックリするほどソ・ダンでした。で、また芝居も良いのよ…。声色からセリフ周りから何から何まで完璧。クールで真面目で素直になれなくて、そんな気位の高い若き美しき令嬢感が良く出ていました。

あと、歌も抜群に上手かったですね。「はい、上手いです!!」と分かりやすく圧っぽく歌うでなく、それとない上手さなのが、だけど彼女の切ない情感が良く乗っている感じが抜群に良い。朝美絢&夢白あや&瀬央ゆりあとの四重奏は、たぶん本作一番の見どころでしょう。

 

その他のキャスト感想

 

3番手格にして悪役のチョ・チョルガンを演じた諏訪さき。男役大好きな彼女ですから、こういうザ・黒い役みたいの、きっとやりたかったんやろな…としみじみ感じてしまうくらいノリノリでした。正真正銘ザ・正統派な悪役ですが、今回はラブロマンスに焦点が当たっているからかドラマ版に比べると出番は少なめ…まぁ仕方ないかな。憎たらしい役を上手く演じていました。

あとはー、主人公の部下4人組は、真那春人が一番目立っていたし久しぶりに「そういう役」でしたけれど、イケメン枠の壮海はるま、オモシロ枠の紀城ゆりや、最年少の苑利香輝あたりは、それぞれ少しずつ出番があるだけでイマイチ目立ってはいなかったかなぁ…。逆に社宅のマダムスはすごくインパクトが強くて、本来の持ち味と逆なことをやらされている杏野このみ(庶民派)愛すみれ(綺麗なボスママ)なこと込みで面白かったです。もちろん雪組の芝居女王・愛羽あやねの突き抜けっぷりも凄かったし、さりげない上手さで唸られてくれる琴峰紗あらも良かったなぁ。

あとは、耳野郎ことチョン・マンボクを演じた麻斗海伶が原作以上に幸薄過ぎて面白上手かったことと、ヒロインの兄にして裏ボスのユン・セヒョンを演じた桜路薫が完全にソレで、その再現度の高さに唸りました。

あ、再現度ナンバーワンといえばヒロインの部下(太っちょ)を演じた和奏樹くんにも副MVPをあげたいくらいの「そのまま」度でした。体型補正に下級生ならではの微笑ましさがありましたけど、本来の持ち味でるイイ人感が役と合っていて非常に良かったです。

 

個人的に気になったこと

 

さて、前回の感想編で大絶賛しといて何ですが…やっぱりツッコミどころはそこそこあったと思います。大前提として、これって原作ドラマを見ていない人は理解出来るんですかね?特に、2幕以降が。正直、1幕の完成度は凄まじかったです。あの冗長なドラマの必要な部分だけを上手に選んで、きちんと話を成立させるなんて…と幕が下りた瞬間に感動したんですけれど、後半はもう怒涛の展開過ぎて、話に感動するというよりは「あ、あの場面ね」と原作を懐かしむ、というフェーズに入ってしまったような気が。

特に原作ファンとして一番引っ掛かったのは、2番手格であるク・スンジュンのキャラ設定が時間の都合上説明されなかったために、ただのチャラい人になってしまったことでしょうか。彼は軟派な態度と爽やかな美貌とは裏腹に狡猾な詐欺師であり、ソ・ダンに近づいたのも彼女の社会的地位や家族の金を利用するためだったからで、だけどうっかり本気で好きになっちゃって、だから最後に敵にソ・ダンが囚われた時も、一回は「そんな女知らないし、どうなっても良い」みたいな態度を平然と取っておきながら、でも最後の亡命便を捨てて命を顧みず助けに行っちゃう…みたいなところに萌えを感じるわけじゃん???そのあたりが全カット、というのはやはり少し悲しかったです。たぶん演出的には、ラーメンのくだりと、航空券を口で破くとこさえ入れときゃ良いと思ってんだろうな、というところに「原作を知ってるありきの脚本」であることは否めないと思います。ま、時間の都合上しょうがないんですけど…。

主人公カップルも、敵との最終対決→ヒロイン九死に一生→主人公が悪者に徹して仲違い→国境線で仲直り、までのくだりが超特急過ぎてなぁ…ドラマ版だと3時間近い内容を15分足らずでやってるので、これもまぁ仕方ないっちゃぁ仕方ないんですけど、ちょっと情緒が足りない気がするな、というのが個人的な不満点です。

 

「おかわり」したいけれど

 

とまぁ、全体的に風呂敷の畳方に「?」と思わなくはないのですが、

王道ラブロマンス作品として充分キュンキュン出来ますし、

原作を知っている身としては普通に楽しめたので良かったです。

 

残念ながら生観劇は1回しか叶わなかったので、

久しぶりにおかわりライブ配信観劇しようかなーと考えているほど面白かったので、

今回残念ながら観られなかった方も、あるいは見た人も、

ぜひ一緒に本作で「宝塚納め」をして欲しいな、と宣伝しておきます。

 

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コメント

  1. ふう より:

    いつも楽しく読んでます。
    私は原作見る気がおきず、見ないまま観劇しました。正直2幕は、初っ端から???でしたがなんとなーく理解したらまた???でした笑
    ラーメンとか何のこっちゃでしたが、韓国独特の何かに掛けたやり取りなのかしら?
    ですが!!最終的に面白かったので帰りの道中にNetflixダウンロードして不時着見初めて楽しんでます。舞台のこのシーンだ!と
    こんな人もいるかもしれませんね笑
    朝美さんと夢白さんのコンビ…最高でした!!!
    大劇場公演も楽しみですね!

  2. こさめ より:

    ドラマは未視聴で今回の公演を見た者です。ドラマよりは巻いてるんだろうなぁとは思いましたが、2幕も展開についていけた(少なくとも振り落とされはしなかった)と思います。

    スンジュンがダンに近づいたのも詐欺師の嗅覚ありきだろうな、というのが瀬央っちの演技で分かるし、そこから本気になるベタよね、うんうん、という感じでした。

    主人公カップルの一連の展開もお約束オブお約束から脱線しないですし。

    総じて2部に駆け足感はありつつも畳むべき風呂敷はちゃんとたたみきったね!という印象で、噂に聞く愛の不時着なる作品を見た!という満足感が大きいです。(概念として知っているつもりになっていた愛の不時着と乖離が少ないと言いますか、そんな感じです。)

    ひとまず、ドラマ未見者の感想でした。

  3. アライグマ より:

    ドラマにドはまりして、何周もしてしまった派の感想です。
    (私も舞台は一回見ただけでの感想です。)

    時間的に相当の制約があるのは承知の上で、あるシーンでは、もう少し、照明を落としてユンセリの不安感を掻き立ててほしかったとか、中隊のメンバーの個性をもう少し出すことはできなかったかなあ、フィナーレはうれしいのだけど、ドラマを深めることに費やすこともあったのではと、思うところはあります。

    ただ、韓国ミュージカルも見ました。歌がうまかったです。
    が、宝塚バージョンはドラマを丁寧に拾っているし、そもそも主要4人が、個性的に光っていた作品になっていて満足です。

    村のおばさまたちのナンバーからの場面はミュージカルらしくて大好きです。

    何より、べたであろうと、キュンキュン要素満載の作品というのは、観劇後の高揚感は何とも言えません。
    最近は、恋愛要素が薄い作品が多くなっているような気がしており、この作品のような二組の恋愛が中核というのはうれしいです。

    愛の不時着は、ドラマはもとより、こちらの作品も北朝鮮という、これまで、ほとんどエンタメにはあらわれなかった世界を舞台にした稀有な作品であり、また、登場人物たちに対する愛ある作品だったと思います。

  4. こころ夫人 より:

    いつも楽しく、興味深く拝見しております。
    花組、月組の御披露目公演を経て、私の今年の宝塚納めも、梅芸での『愛の不時着』となります。
    記事を読ませていただき、楽しみが増すばかりです。
    朝美さんの大劇場御披露目公演も、待ち遠しいです。

  5. 単機墜落 より:

    いつも楽しく拝見しております。
    ドラマ未視聴、知ってるのはあらすじ程度でしたがなんとなく理解はできました。
    ただ理解はできるのですが、説明不足が過ぎて作品としてはどうなの?と疑問が残ります。
    仮に愛の不時着を宝塚の演出家が舞台化しました!でこの脚本出されたら超低評価の嵐になるレベルだと思っています。
    ドラマを見てない身からすると一幕少し削って二幕の説明に当てたほうがいいように思えてしまいました。一幕と二幕の情報バランスが悪すぎる気がしてます。
    また演出も暗転が多すぎて流れが切れる印象があり幕前芝居も最近の作品としては珍しいくらい多いなと驚きました。
    朝美さんと夢白さんと他皆さんの美しさと芝居力と、最後の大団円になんとかなってる感ありますが、冷静になると雪組生の力を持ってしても脚本演出に無理がありすぎて評価が高い理由わららず正直謎に思ってます。

  6. より:

    梅芸で無事に不時着して来ました。

    余韻で魅せるドラマ原作から良く1本の舞台にしたと思いながら原作ドラマ見てないとおっしゃる通りこれは厳しいですね。
    正直、演者たちの力技で成立させた感が否めませんでした。
    とはいえ見せ場はぶつ切りになってますが入ってるので原作を知ってる私は楽しめましたが。
    本来なら宝塚のトップスターがトップ娘役が演じる役ではないだろう作品でキラキラのトップコンビが抑えながら弾けながら演じてるのを観られたのは貴重な機会でした。
    瀬央さんを生で初めて見たのですが、お上手でした。流石の別箱主演経験者!
    3人の並びも良いので雪組に新しい風ですね。
    華純さんはキツめの役も出来るのですね〜。感心しました。
    部下たちも少ない出番で個性を見せようと頑張ってましたし、キムチのおばさまの方々も面白かったです。
    ここ最近観ていてエンリコくん持ってますね。役としてもっと喋らせてあげたい。
    壮海くんも歌声が素晴らしかった。もっと歌も聴きたい。

    朝美さんはプチとは言えお披露目公演ですが、肩に力を入れずに作品の成立に重きを置いてる感じが良かったです。夢白さんはもう少し暴れてても良かったかも?
    ありがたい事になんやかやと数回観られるので楽しみたいと思います。