星組と言えば、皆さん何を思い浮かべますか?
よく言われるのは「コスチュームの星組」、
そして「超体育会系」「舞台技術よりもいかに目立つか」などなど
その特色が結構ハッキリしているイメージなのですが、
私が思う星組の印象は
5組の中で最も「人事上手」な組であるということ。
平成以降の宝塚史における様々な人事的混乱は花月雪宙で起こっており
星組は(香寿や安蘭が結果オーライとすれば)蚊帳の外なうえ、
全体の緩衝材としての役割も果たしてきた印象。
というわけで本日は、
そんな星組人事について思ったことをまとめていきます。
別格&路線落ちスターに優しい星組
星組は2000年以降の組替え多発時代においても
多く生抜きトップを輩出しているのが特徴的です。
この20年での生抜きトップは稔幸、柚希礼音、紅ゆずる、礼真琴、
さらに湖月わたるも新専科を経てはいても、一応は星組出身者。
その生抜きトップを生む傍らで、
いわゆる上級生「別格」or「路線落ち」スターの処遇が
上手なのが星組の凄いところ。
最近の例で挙げるなら、
礼真琴の爆上げの横で上手に転がされた麻央侑希と七海ひろき。
麻央侑希は94期生、珠城りょうとともに期待の両翼として
新公主演2回、初詣ポスターモデルまで務めました。
が、残念ながら下級生の礼に抜かされ、いわゆる路線落ちしてしまうわけですが、
最後まで舞台上の扱いや階段降りもうまーく配慮し、
彼女の顔を潰すことなく上手に退団まで花を添え続けました。
七海ひろきは組替え後、すぐ礼真琴の下に据え置かれるわけですが、
バウ主演や3番目扱いなどこちらも上手く配慮し
最後の最後で3番手羽根を背負ったことで
「良かったね」的扱いで退団の運びとなり、惜しまれつつ劇団を去りました。
その他振り返れば、
涼紫央、壱城あずさ、十碧れいや、などなど
「上手に配慮されながら退団していった」スターは数知れず。
宝塚の人事レース、特に生抜きトップを上げる際は、
早期抜擢もしくは上級生を抜き去るなど、必ず何かしらの軋轢を生むもの。
それを上手にガス抜きしながら運営し、
それでも「星組らしさ」を失わないのだから面白いですよね。
※蛇足ですが、他組の人事印象を一言で言うと、
新公主演をバラし過ぎて若手の路線渋滞をすぐに起こす花&宙、
常時サイコパスで軋轢ばかりの月、
一人っ子制作&10年に一回謎の破壊行動に出る雪、という感じでしょうか。笑
瀬央ゆりあが星組に期待されたこと
ということで本題の瀬央ゆりあについて。
95期生男役7人(礼・柚香・月城・桜木・朝美・水美・瀬央)の中で、
最も成績下位で、最も新公主演が遅く、
そして最もバウ主演も遅かった瀬央ゆりあ。
常に95期生最後のランナーとして走り続けてきた彼女ですが、
ここに来て抜擢の嵐、そして華形や愛月にブロックされているとは言え、
なんだか番手も上がりそうで上がらなそうで上がりそうな雰囲気。
その理由は、星組が彼女に与える至上命題が
人事的にピタリとハマっているからだと個人的には思っています。
その至上命題とはずばり、礼真琴の影。
礼真琴が星組の、そして宝塚全体の期待のトップとして
大いなる期待を寄せられているのは、皆さんご存じの通り。
そんな彼女のスター特性は、
さながら少年漫画の主人公のような爽やかさと熱血さ。
そして完全無欠なダンス・歌唱力等の舞台技術。
しかしながら、いわゆる正統派男役的なスタイル、
つまり渋さや男クサさというものが欠けているわけですが、
それを補完する役割を果たす存在として白羽の矢が立ったのが、
同期の瀬央ゆりあだったのでしょう。
95期生男役7人の中で、
最も宝塚男役的な渋さを醸すビジュアルである彼女は
礼真琴の「同期支え」を果たすのにピッタリな存在だと言えます。
星組の期待に応え続けた別箱公演
しかし、星組が望んでいたのは
そのような補完関係だけではありません。
最終着地点は、同期支えだけではなく、
舞台上で礼のライバル的存在・敵役・バディ関係等の役柄が
似合うようなスターになることなのでしょう。
つまり、早霧と望海、真風と芹香のような関係性を
自組かつ同期同士で培養しようと考えたわけですね。
それを礼の2回目のバウ主演公演である
『鈴蘭』のヴィクトル役を演じた際に見たのかどうかは分かりませんが、
少なくとも紅体制になって以降、
つまり次期トップが礼だとほぼ本決まりになって以降は、
番手の縛りのない外箱において、非常に計画的に育成されてるような印象です。
まずは礼の初東上公演『阿弖流為-ATERUI-』。
ここで礼の敵役である坂上田村麻呂という役を振られ、
相性的に問題が無いと判断されたのでしょう。
これ以降は全て礼と離され、独自の育成が始まります。
続く轟理事降臨の『ドクトル・ジバゴ』では
冷酷無慈悲なパーヴェル役で主演の(しかも轟の)敵役を、
『New Wave!-星-』では苦手とするショーの鍛錬に励み、
初単独主演作品となった『デビュタント』では
正塚ワールドの中で、いかにも宝塚の男役的な存在を経験。
そして紅&綺咲の最後の外箱公演
『鎌足-夢のまほろば、大和し美し-』で
星組らしさの継承、トップを支えるとは何たるかを学び、
2度目のバウ主演『龍の宮物語』で最後の総仕上げなのでしょう。
かように、礼の好敵手として非常に計画的に育成されている印象ですが
瀬央ゆりあはその期待に十二分に応えてきたと言えます。
『Eclair Brillant』で娘役を従えながら現れた彼女の、
あのスター然とした輝き。
そこにはもう、抜擢当初の、どこか自信なさげな彼女の姿はありませんでした。
星組の未来と、人事手腕に期待
というわけで、星組の思惑とスター本人の努力がピタリとはまり、
当初の想定以上の立場まで上り詰められそうな情勢である、
というのが現段階での瀬央ゆりあの現状だと思います。
この星組の人事上手さこそが、
同じ95期、新公主演1回と扱いがほぼ同格であった水美舞斗と
今その立場を分かつものだと思うのですが、それはまた別の機会にて…。
とりあえず、現在スカステで放送中のロングインタビューを見ると
彼女の「宝塚から求められているもの」の自覚力の高さに目を見張ると同時に、
スターとしての扱いの変遷が辿れるので、ぜひ視聴をお勧めします。笑
しかしながらここで事件が。
本来彼女が求められるであろうポストに、
まさかの愛月ひかるが落下してきたわけですが、
果たして星組はどう「人事上手」を発揮して、それぞれに役割を振っていくのでしょう。
そして大いなる成長を果たした瀬央ゆりあが
どのような活躍をしていくのか、期待が高まりますね。
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コメント
雪・宙寄りの私が、先日はじめて月組を観劇して感じたのが「別格上級生のムダ遣い」(ごめんなさい)でした。ソウタさん命名「雪組別格四天王」や、ロイヤル澄輝(今後は紫藤か)のキャラ確立に比べ、千海・紫門など、あぁもったいない。
そのあたりがお上手なのが星組ですね。ニコニコした(←ここポイント)天寿・瀬央が効いていて、スカッと観ていられる。あんなに努力して、色々思うところがあるだろうに、ニコニコ。みんながつい応援してしまう仕組み。
礼体制になったら星も行くぞーと思っていましたら、私の好きな愛月までやってきました。まんまと星Pの人事戦略にハマっています。笑
コメントありがとうございます‼
確かに言われてみたら勿体ないかも…上手に使われてる別格といえば輝月ゆうまくらいですかね?
そして天寿さん、確かにポジショニング的にもっとガツガツメラメラしてもよさそうなのに、
楽しそうに今の立場を果たしているのって面白いですよね。そういう意味でも星組って別格の扱いが上手とも言えますね。
星の話題だったので出て来ました。先日も申し上げた通り、日向薫さん時代からの星贔屓です。
個人的な印象なのですが、星贔屓の人間は、『キャラの濃さ』を重視しますが、『キャラの方向性』については割と寛容な気がします。舞台技術特化タイプでも、ビジュアル特化タイプでも、それぞれ、『自分の持ち味を存分に発揮して欲しい』と思っているんですね。ファン感情的な意味でも、配属された組子との相性という意味でも、『合う・合わない』が解りやすいというのは欠点ではあるんでしょうが、5組あるんだから、別に1組ぐらい、そういうところがあってもいいんじゃない? という感じです(笑)。私は単なるいち観客に過ぎませんが、どうせ見るなら、『取り立てて欠点がない80点』より、『一点突破型の120点』の方が見ていて楽しいです。自家用車を買うなら取り立てて欠点がない80点を選びますが、舞台はそうじゃありませんから(笑)。
(そしてこういうタイプが星に落ちて行くのだと思います。笑)
コメントありがとうございます‼
宝塚に限らず、無難よりは『一点突破型の120点』の方が心惹かれるものがあるのは事実ですよね。、
星組さんはそれがより突き抜けているイメージですね。それが星組というくくりの中で最大限化しようとしているから個性が強いといいますか。
だからこそ熱狂的組ファンが多いのかもしれませんね。
余計な軋轢を生まない点で、男役さんの配置(言い方が悪いですが)
が上手くいっている組なのかなと思います。誰が見ても、ひとまず
納得できるというか…。
前トップコンビさんは技術的・実力的には??となる部分があっても、自組からの這い上がりでしたし、今のお二人は実力です。
早期抜擢型・大器晩成型どちらのタイプの方も、きちんと応えていらっしゃる気がします。
娘役さんにも同じぐらいのことをすれば、人事としては完璧な組になるんじゃないかと思います。
なぜ同じ宝塚という中で、サイコパスな(誰も納得しがたい)ことを
くり返す組と「うんうん(^O^)」と思える組ができるんでしょうね(笑)
コメントありがとうございます‼
香寿、安蘭、北翔という実力派を遅咲きで迎えたり、かと思えば柚希や礼のような早期御曹司を早く上げたり、
いろいろと目まぐるしい中でもお上手ですよね。
娘役で言えば、確かに「舞空落下」だけ見れば波乱ですけど、逆に貧乏くじを一見引いたように見える有沙は娘2で大活躍、
99期以下の抜擢も上手にばらけて…と、そこそこ上手な印象ですね。
そのあたりはやはり組Pの性質というか、脈々と続いている組カラーみたいなものなのかもしれません。笑
またまた古株ファンが出しゃばらせていただきます。蒼汰さんの星組人事のお話で、思い出されたのが鳳蘭さんトップ時代の同期の但馬久美さんです。ベルばらブームに乗っかってファンになった私には当時、但馬久美さんは正2番手なんだと疑いもせず観劇していました。当時はバウホールもできたかできないかの時代で、東上なんぞない時代でしたので、単独主演なぞもなかった訳ですが、『ベルサイユのばらⅢ』では各組よりトップたちのオスカルの客演、鳳さんのフェルゼンで、但馬さんはアンドレ役でしたから。(汀さんがオスカル出演の時は同期が3人揃っての公演になりました)
鳳さんの傍らには必ず但馬さんが。で、瀬戸内美八さんが突然落下傘トップになり、但馬さんは花組へ組替え。その時になって、但馬さんて、路線ではないことに初めて気づきました。その頃、峰さを理さんて、小公子やってたんですよね、まだ。鳳さんの弟役とかが多かったですもんね。瀬戸内さんがトップになられてから、初めてがっつり2番手になられました。そうこうする内に峰さんとタイプがどうもかぶってるんじゃないの?と思ってた、峰さんより一期下の山城はるかさんが雪組より組替えで星組に。峰さんがトップ就任時には2番手になられましたが、『我が愛は山の彼方に』のチャムガ役を最後に退団され、本命(?)2番手の日向薫さん&紫苑ゆうさんの時代になります。
ああ、星組って昔からそういう組だったわーと思い出してしまいました。但馬さんも山城さんも歌劇もグラフも表紙にはなっておられません。山城さんはバウホールで単独主演もされています。
コメントありがとうございます‼
古い話でなるほど、確かによく分かりませんが…笑
とりあえず星組は昔からそうだったということですね。それだともはや組のDNAみたいなものなのかもしれません。笑