花組『Dream On!』の本当の目的

当ブログで繰り返し述べている通り、

「人事」というのは川の流れのようなものであり

その一地点だけを見て一喜一憂するのは意味がなく、

最終到達地点にたどり着いて、初めてその意味が分かるものだと思います。

 

裏を返せば、当時何となく見逃していたことも、

振り返った時に「なるほど、そういうことだったのか」

その本当の意味に気付くことも多々あるわけで。

 

ということで本日は、2019年のビックリ人事の一つ

花組公演『Dream On!』について今更気付いたことをまとめます。

 

瀬央VS水美という構図の裏で

 

まず大前提として、以前記事でまとめた通り、

バウ考

バウ公演には原則として

芝居バウ(主演) > 芝居+ショーバウ(主演) > ショーバウ(主演) > ショーバウ(主な出演者)

という序列があります。

 

花組公演『Dream On!』は

若手スターである綺城と飛龍が「主な出演者」として発表され、

その後、水美舞斗が「特別出演」することが明らかになりました。

 

さらにその後、星組の瀬央ゆりあが

『龍の宮物語』で2度目の「主演」をすることが発表。

 

これだけを見れば、スターの序列が

瀬央ゆりあ > 水美舞斗 と位置づけられたと見えるわけですが、

本当にそうでしょうか?

 

 

これに関しては、これまた以前の記事にて

瀬央ゆりあ・2度目のバウ主演決定‼

以下の通り予想しました。

 

①花組はトップを支えるため次期体制で若手を重用するため、

綺城と飛龍に出番を振ったのだろう。

②星組は誰かが落下するので次期体制で若手を重用する必要が無く

瀬央に出番を振る時間的余裕があるのだろう。

→よって瀬央の番手が上がるとは一概に言えない。

 

蓋を開けてみれば、永久輝せあ&愛月ひかるの組替えが起き、

予想がそこそこ当たったことになるわけです、が。

 

この中途半端な体制のバウ公演の目的は、

本当にそれだけでしょうか?(2回目)

 

始まる96期生以下スターの「整理」

 

すっかり忘れていましたけれど、

組替えしたのは永久輝と愛月だけではありません。

 

そう、花組の綺城ひか理

星組の紫藤りゅうも組替えしてるんですよね。

 

この2人を含めて考えると、これらのバウ公演とその主演者には

別の意味合いを持ち始めることが分かります。

 

 

まず、花組に路線スター大本命・永久輝が殴り込みにくるにあたり

押し出されたかたちとなった同期の綺城。

 

彼女の星組への組替えは、

礼新体制における技術補填であり、97期生の保険でもあり、

そして天華・極美(さらに言えば天飛も?)の蓋要員と考えられるでしょう。

 

彼女が路線スターとして星組へ行くにあたり、

例えそれが脇路線だったとしても、

ただの「新公主演済スター」では心もとない。

 

つまり星組への組替えが決まっていたからこそ、

『Dream On!』は箔付けのためのバウ主演だったと考えられます。

 

もちろん、単独主演させるなんて

スターの格的にもっての他(瀬央と同格になってしまう)なわけですが、

一緒にボカすのに丁度良い飛龍もいる。

 

水美にバウ主演させ、永久輝と混戦させないうえで、

「主な出演者」という中途半端な肩書を彼女たちにつけるための公演こそが

『Dream On!』だったと言えるのかもしれません。

 

 

逆に星組で言えば、綺城が蓋要員としてやって来るにあたり

天華も極美も、さらに言えば紫藤にも、

例え「主な出演者」であっても肩書をつけると面倒なことになる。

 

紫藤に関して言えば、宙組への組替えにあたり、

同期に和希そらがいるわけですが

彼女は『ハッスルメイツ!』にて「主演」を経験済み。

 

紫藤がこのタイミングで何もしないことで

序列は和希の方が上となり、体制を整えたと言えます。

 

なのでこのタイミングで若手に中途半端なバウ主演を回さずに、

瀬央ゆりあに2回目のご当番をいただいた、と考えるのが自然でしょう。

 

で、す、が。

ここで単純に綺城&飛龍バウ瀬央バウにしてしまうと、

瀬央と水美の間に明確な差が生じてしまう。

 

華形の連続登板による瀬央の足踏み状態から分かる通り、

劇団は95期生7人の序列を現時点で変えるつもりは無いようなので、

水美を「特別出演」というかたちでご当番いただき、

バランスを取ったと言えるでしょう。

 

当時は「チケットを売るための客寄せパンダかよ」的な意見がありましたが

(まぁ半分そうなんでしょうけど。笑)

色々と配慮をした結果の、不思議な形の公演になったのかもしれません。

 

水美舞斗の芝居バウ主演の行方

 

そんなわけで、『Dream On!』の中途半端体制での主演により

【花組】

柚香→瀬戸(東上)→水美・永久輝(バウ)→飛龍(Dream On!)→帆純・聖乃

【星組】

礼→愛月(東上)→(華形→)瀬央(バウ)→綺城(Dream On!)→天華・極美・天飛

 

という序列が綺麗に構築されたわけですね。

うーむ、上手く出来ているなぁ…。

 

 

ところで、綺城が『Dream On!』からの星組へ蓋要員としてやってきた、

つまり急ピッチで若手を育てる様子が無いということは、

礼・愛月・瀬央の星組新体制ラインが、

しばらく動かないことの裏返しであると思います。

 

逆に花組の柚香・瀬戸・水美のラインは、

そう遠くない未来に変動があるため、本命として永久輝を組替えさせ、

脇路線(ポスト瀬戸)に飛龍を置くための『Dream On!』主演なのでしょう。

 

…じゃあ水美舞斗は?彼女はどうなるの?

 

彼女の立場に関する最終的な答えは、

花組の来年のバウ公演が鍵なんじゃないかと思います。

 

永久輝せあ2度目の主演だったら、残念。

聖乃あすか主演だったら、まだ分からない。

…水美主演・研12のラストチャンスがあるかな?

 

大空祐飛・研13にしてバウ初単独主演という例もありますから

もちろんまだ何とも言えません。

 

少なくとも『Dream On!』のタイミングで

主演格を外されなかったということは、

まだ完全に脇路線にされたわけでは無いとも言えるからです。

 

果たして、この人事の川はどこにたどり着くものなのか。

あるいはまだ見えていない「何か」があるのか。

96期生以下の進退も含め、その先が気になるところですね。

 

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コメント

  1. みみまみ より:

    こんにちは。いつも新しい記事、楽しみにしています。
    Dream onの時、水美さんのファンは荒れていたようですね。ファンが荒れるのも分かるくらい、スッキリしない特出の仕方だなーと思いましたが、こうして説明してもらえると、
    「あぁ、そういう意図だったのだな。」
    と納得がいきました。
    これだけ前に色々な人事が決定していたことを考えると、もう内部では来年バウ主演は決まっているのでしょうか?
    永久輝さんと水美さんを比較してから、決めるのでしょうか?
    どちらにせよ、ファンは発表までヤキモキするしかありませんが・・・。

    水美さん、ハッタリ芸が苦手ですよね。イケメン度・ダンス能力は高いのだから、宙組トップのような
    「別に上手くないのに、すごいものを見せられている気がする」
    あの男役のハッタリ芸を身につけたら、最強なのにな・・・と常々思います。
    他の95期生や下級生の路線スター等が、ウインクや流し目で、がつがつファンを舞台から釣り上げているのに、どこか1人爽やかさが漂っていて、
    それが水美さんの持ち味と言えばそうなのですが。

    95期はポテンシャル高いですし、個々の芸風が被らず好きなのですが、人気がある分、人事が扱いを失敗すると大変なことになりそうで、見ていてハラハラします。