これは傑作!!・花組『二人だけの戦場』感想

 

昨日は聖乃あすか主演『舞姫』のライブ配信日でしたが、

私は池袋まで行き、約2ヶ月ぶりの宝塚観劇をして参りました。

 

 

そう、花組『二人だけの戦場』です。

私は初演を映像ですら見たことがなく、

かつ敢えて事前情報を入れずに観劇しました。

前評判が良かったので期待して参りましたが…想像以上に面白かったです!!

 

まるで90年代名作映画のよう

 

さて、私は柚香光率いる花組とは残念ながら縁が薄く、公演チケットの数々がコロナの前に露と消えていきました。が、なぜか外箱公演とは縁が深くて、東で上演したものは漏れなく観劇出来ています。『哀しみのコルドバ』『フィレンツェに燃える』も見ましたけど、同じ予算削減による古臭い再演物シリーズでありながら、本作は特出して素晴らしく、かつ上演意義が感じられる作品だったと思います。

演出家が正塚先生ということで、もっと小難しく、メッセージ性モリモリな作品かと思いきや、分かりやすい「THE・人間ドラマ」なお話でした。とにかく登場人物が魅力的で、主人公は理想に燃える青年士官、ヒロインは迫害民族の姫的存在、理性的なのにちょっと貧乏くじを引きがちな親友、敵かな?味方かな?な黒レンジャーのようなヒロインの兄、変人大佐と粗野な族長はツーカーの仲、それを良しとしない中間管理職、主人公たちを見守る女主人とその恋人…。彼らの動きが、そして紡ぎ出す言葉が、とにかくドラマティックで感動的です。「お父さんに変わってるって言われたってことは、気に入られた証拠よ!!」とか、「本当にアンタは…軍人に向かない男だよ」とか、まるで90年代の名作映画を見ているようでした…って初演が1994年だから当然か。当時のスタンダードですものね。

そして特筆すべきは、その脚本構成力の高さです。裁判形式で「上司殺害」というオチが見える中で物語が進行し、蛇足になりがちな細かい説明を陳述形式にした点が見事だし、その一方で先が微妙に読めず、果たして独立出来るのか出来ないのか、主人公たちがくっつくのかくっつかないのか、常に手に汗握るスリリングな展開で面白かったです。特に、主人公たちが窮地に追いやられるまでの流れが驚くほど納得出来て、これをオリジナル作品として成立させた正塚先生の脚本力に脱帽しました。最後のハッピーエンドのようで、ほんのりビターな終わり方も良かったですしね。これぞまさしく「隠れた名作」。初演版もぜひ見たくなりました。

 

まさに少女漫画の花組:主要3役感想

 

キャスト感想に関してはさっくりと。

まずは主人公の柚香光、驚くほど軍服が似合っていましたね(知ってた)。前述の通り90年代名作映画を見ている気分になったので、心なしか彼女がトム・〇ルーズに見えてきたり…白軍服ですし?自然派芝居が良い方向に作用していて、実に魅力的な、そして主人公らしい若手士官を演じていました。あと、謎に歌唱力が向上していた気が…?

そしてヒロインの星風まどか。今回も安定のヒロイン芝居でしたが、心なしか花總まりを彷彿とさせるセリフ回しや表情作りがあったような気がして興味深かったです。それでも少女性を失わないのが彼女の凄いところ。そして、柚香光との並びの良さを改めて実感しましたね。この2人が揃うと、溢れ出てしまうのが「少女漫画化パワー」。本作がラブロマンスの側面が強く出ていたのも、この2人の並びのおかげだと思います。もし違うトップスターが演じていたら、もっとメッセージ性の方が強い作品になっていたかもしれず、その意味でこの2人でこその再演に意味があったと私は評価したいです。

主人公の親友役である永久輝せあ。あぁ良かった、やっっっっっっっっっっっっとマトモな役と出会えましたね。柚香光との並びが麗しいのは『哀しみのコルドバ』で分かっていましたけれど、芝居の相性も良い塩梅。行間で笑いを取るというのは本当に難しいですけれど、それをやれちゃうのは彼女の芝居力の高さがゆえでしょう。ちょっと可哀想な感じも魅力的にみえ、永久輝せあによく似合っていたと思います。

 

その他のキャスト感想

 

3番手格にしてヒロインの兄は希波らいと。本作における主テーマの1つが彼女のプッシュだったと思いますが、その期待にたぶん応えられていたでしょう。芹香斗亜と愛月ひかるを足して割らずに平成初期パウダーを振りかけたような、一人だけ1994年から抜け出たような持ち味で、良い意味で目立っていました。こういう芸風が好きな人にはとにかく刺さるだろうし、その路線でいくのがたぶん正解なんだろうなーって感じ。

はすっぱな女主人・エルサ役は朝葉ことの。歌も芝居も、103期生ながら驚く程の上手さ!!さすが(たぶん)実力でバウWヒロを取っただけあります。97期の春妃うららなんかより、よっぽど良い立ち位置でしたね。これからも脇役系花娘の正統後継者として、美味しく重宝されるんじゃないでしょうか。

若手ワラワラの中だと、104期生の天城れいんが主に芝居面で光ってみえたように思います。主人公に対して憎々しげに浮かべる表情など実に緻密で、繊細な表現力でした。顔も綺麗ですし、新公主演たどりつけるといいですね。

個人的に株を上げたのが、副組長の航琉ひびきですよ。最近の彼女は老け役が続いていて、正直「ん?」って感じだったのですが、本作では憎まれ役を見事に演じ切っていました。高翔&凛城の専科コンビに引けを取らない、素晴らしい芝居だったと思います。

感想を書く時、毎回「個人的MVP」を決めているのですが、今回は全員が等しく素晴らしく、まさに総力戦的に作品を作り上げたからこその出来栄えだったように思います。

 

正塚先生って凄い!!

 

と、ここまで書いて思ったのは、真のMVPは正塚先生かもしれません。笑

令和のこの時代でも色褪せない素晴らしい脚本力とメッセージ性は見事だと思いましたし、それでいて裁判所での足元の照明とか、冒頭の絵画が透けて始まるモノローグとか、演出面ではちゃんと現代ナイズトされていて、実に見易かったです。

それに正塚先生なのにまさか最後にちゃんとくっつくなんて…!!と驚きましたけど、よくよく考えてみると『メランコリック・ジゴロ』がありますもんね。改めて正塚先生の凄さも実感した花組公演でした!!

 

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コメント

  1. 90年代ヅカファン より:

    大好きな作品なので感想嬉しいです。
    個人的には一路さんと花總さんのベスト作品だとも思っています。
    ひとつだけ、すきっぱではなくはすっぱではないでしょうか。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼︎
      そうですはすっぱですねw我ながらアホ過ぎる間違いですいません…。

  2. ポポロ より:

    蒼汰さま

    私も全く同様の感想を抱きました。

    脚本、演出、役者とすべてが素晴らしい作品だと思います。

    柚香、星風、永久輝は、一路、花總、轟と持ち味の違うので、
    異なる味わいの人物として演じていましたが、初演に負けない素晴らしい舞台だと思いました。

    これからの花組が楽しみですし、この作品は宝塚で大切に再演を続けて
    もらいたいと思いますね。

    ただ、いつも思うのですが、この公演に限らず、東京での公演日数をもっと増やしてもらえないものでしょうか。
    宝塚が本拠地ではありますが、やはり首都圏の人口を考えると公演日数が少な過ぎると思います。
    チケットがとれません、、、

  3. ドルチェ より:

    やっと観劇できました。
    配信は見ていましたが、やはり受ける感動レベルが違いますね。
    白軍服の隊列登場シーン、裁判のシーン、コメディのシーン、もちろんラストも
    どれも素晴らしかったです!
    正塚先生の作品はどちらかというと苦手(ケイレブハント、薔薇に降る雨など)でしたが、メランコリックジゴロは好きだったので、小劇場で真ん中に役者が揃うと上等な芝居を観たという充実感いっぱいです。
    次の鴛鴦が益々楽しみになってきました。