月組『I AM FROM AUSTRIA』感想

月組公演『I AM FROM AUSTRIA』を観劇したので、

感想をまとめていきたいと思います。

 

最初にざっくり箇条書きにすると

・老若男女が楽しめる、分かりやすい作品だったと思う。

・珠城体制月組の作品の中で、最もビジュアル水準が高かった。

・めっちゃ金かかってそう。

 

という感じ。

期待値通りの楽しめる公演でした!!

 

宝塚らしからぬ普遍的なテーマ

 

この作品のテーマは

ずばり「アイデンティティの構築」。

 

故郷を捨て、異国で成功を収めた美しい女性が

祖国を愛する男性を通して本来の自分を取り戻す話であり、

 

ポンコツ御曹司としてチャラチャラ生きてきた男性が

真に愛する女性と出会ったことで本当の自分を見つける話でもある。

 

美を追求する宝塚には珍しい、

娯楽として非常に普遍的なテーマであり、

それが逆に見ていて新鮮だなぁと感じました。

 

アイデンティティの構築は、

必ず他者を介在せねば成し得ることができません。

 

ウィーンの街並みや郊外の大自然の中で、

また富裕層からヒッピーまで様々な人間との関わりを通じて生まれる

「私たちはオーストリア人だ!!」という愛郷賛歌。

 

なるほど、今作がオーストリアでヒットする理由が

非常によく分かるというものです。

 

ですから、これをそのまま日本に持ってくるとなったうえで

「オーストリア大好き!!」的部分を上手に人類愛風味に変えたことで

老若男女誰が見ても分かりやすい、

ハッピーミュージカルになったのだなと思います。

 

 

また、公演を通じて結構「笑い」が起きていたのですが

これがまた非常に大衆的。

 

宝塚における笑いってだいたい内輪ネタで

例えば次回作の公演の宣伝とか、

客席のOB弄りなどがほとんどなわけですが

 

今作は夫婦漫才や間の取り方など、

誰が見ても分かるネタを取り扱っていて好印象。

(エリザネタは一般教養ということで。笑)

 

見ていてほっこり安心出来るような、

素敵な公演だったなぁと感じましたね。

 

パブロの扱いが日本仕様?

 

だけど一つ気になったのがパブロの扱い。

 

蒼汰も管理人も原典版を見ていないので分からないのですが

パブロのキャラ設定、だいぶ弄ってません?

 

そもそもパブロがなぜエマとの結婚を承諾したかといえば、

たぶんゲイである自分のカモフラージュなわけで、

 

同性愛者としての葛藤、スターである自分自身とのギャップ等がありながら、

一連の騒動を通じて彼もまたアイデンティティを構築する…

 

という話のはずなのに、

ただのラテンなノーテンキ脳筋野郎になっているような。笑

 

とはいえ、今作を宝塚版にアレンジするにあたり

最も話題になっていたのはパブロの脚色の行方なわけですが

すみれコードに引っかからないよう演出した結果、

こんな出来上がりになった、と言われてしまえばその通りなんですけどね。

 

むむむ、なんだか解せないぞと思っていたら

管理人masaさんいわく、

「ワンコ系脳筋スター男子と不幸体質系平凡男子というカップリングが

腐女子の心にジャストで刺さるのだから仕方ない」とのこと。

 

なるほどね~。

 

そして実際、フェリックスとの関係性が非常に好評であることを思えば

(私の観劇中も周りの皆さんが一斉にオペラグラスを上げていて面白かった。笑)

日本のお客様の需要に応えた改編と言えるのかもしれませんね。

 

ビジュアルと演出面に関して

 

続いてビジュアル面ですが、

みんな役と任にピッタリで良かったと思います。

 

特に美園さくらは本当に垢抜けましたねぇ。

昨日久しぶりに『雨に唄えば』を見たのですが、

その成長っぷりに愕然。笑

 

ゴージャス系娘役として、

きっちり作り込んでいて良かったです。

 

珠城もシュッとしていてロングコートもセーターも似合っていたし

月城は地顔の美しさが上手に強調されていたし、

鳳月のヒゲイケオジも素敵でした。

 

そして何よりも暁パブロ!!

刈り込みにも驚いたけどその異次元スタイルが本当に凄い!!

スター然としていてカッコ良かったです。

 

演出面で言えば、

色味的になんだかクリスマスっぽい雰囲気があって、

この時期にピッタリだなぁとほっこりしました。笑

 

しかしまぁ、非常に金がかかってますよね。

幕前にはアニメ絵、映像演出がガンガン、

しまいにゃヘリまで出てきます。

 

宝塚の演出面での技術進歩は目を見張るものがありますが、

色んな効果をぜーんぶぶっこんだ結果、

いささか目にうるさい印象だったのも事実。

 

その割に第一幕の終わりがあっさりだったり、

雪山&別荘でトップコンビが何も変化がないままずっと突っ立てたりと

なんだかバランスが…と思わなくもなかったり。

 

一本物って難しいんだなぁと

素人ながら感じた作品でもありました。

 

総括:目指せ珠城の代表作!!

 

というわけで、感想を一言で書くと

この作品を珠城りょうの代表作にせんという

製作者側の並々ならぬ思いをビシバシと感じた公演でした。笑

 

少なくとも『エリザベート』をはじめとする再演物に比べれば

今の月組にピッタリな作品だと見ていて感じたので

公演は成功だったと思いますけど、代表作と認められるかは今後次第かな?

 

というわけで次はキャスト別感想!!

 

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コメント

  1. あやこ より:

    普遍的なテーマの現代劇&1本物って、そういえば少ないですね。
    昨日、宙組へ行ってきましたが、わけのわからんコスプレ祭りの時代物(褒めてます)+うっとりギラギラショーでしたから、印象がガラッと違いました。月組とIAFAの醸し出す「ファミリーミュージカル」感は、一周回って、希少かもしれません。修学旅行生にも、バスツアーのシニアにも、海外の方にもお楽しみいただけますね。
    ロッジのシーンの中だるみ(?)や、おだやかで上品な笑い(これは光月組長のひとり勝ち)など、観劇時を思い出しながら拝読しました。キャスト別感想も楽しみにしています。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      まだ見ていないので分からないのですが、ごった煮トンチキオリジナル作品+煌びやかショーの方が「宝塚の王道」って面白いですよね。笑
      おっしゃる通り、宝塚っぽくなさが逆に初心者向けなのかなーと思ったり。
      組長さん美味しかったですよね、今作。上品なエンタメを軽やかに引っ張っていた印象です。

  2. 渡辺 より:

    私も本日IAFA観劇いたしました。宝塚ファンになりたてで大劇場作品は壬生義士伝に続く2作目だったもので、映像から舞台装置から華やかさのギャップにびっくりすることばかりでした!笑 とはいえ記事でも仰られていたようにクリスマスシーズンにぴったりな皆でほっこりとした気持ちになれるような作品でしたね。この時期に壬生をやっていたら身も心も寒くてしんどいですもんね、、笑 ファンになりたての身としては身内アドリブも懸念していたのですが、そんな心配は無用でたくさん笑わせていただきました。月組さんだけあってスポットライトが当たっていない下級生に至るまできめ細やかな芝居をしている印象でした。長々とコメント失礼いたしました。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      確かに壬生をこの時期にやると凍えてしまいそう…笑
      月組さんは若手の小芝居も見どころですもんね!!楽しまれたようで何よりです。^^

  3. YS より:

    宝塚は元が「花嫁学校」だった経緯もあり内情は相当なホモフォビアだと思うので(実際「同性婚」で話題になった方はあまりの女社会に耐えられずにすぐ辞めた、みたいなコメントしていた記憶が…)、ゲイネタを扱うだけでも凄いのでは…と、こそっと思ってます(笑)

    今作は観てませんし観る予定もないですが、観に行かれた方のお話だと「本当の主役はさくら嬢」だという感想で、珠城氏の代表作にしようという制作側の意図は外野からもビシバシ感じるのに皮肉だな~、と思ったのですが、、感想の続きを楽しみにしています。

    とりあえず今週久しぶりに宝塚観劇行ってきます。東京では超絶チケ難でもムラなら時々若干の戻りが出たり、プレイガイド先行でサクッと当たったりで、宙雪連続で取れたので。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      なるほど、確かにそういう意味では画期的な表現だったのかもしれませんね。
      もともとエマが主役な作品ですから改編は難しかったのかもしれませんけど、私はどちらかというとジョージが主演に見えたクチでした。まぁ人それぞれですよね。
      わー羨ましい!!ぜひ楽しんできてください。^^

  4. こんちゃん より:

    いつも楽しみに拝読しております。あの月組大劇場ムラ楽ライビュの動員に微力ながら貢献していたライビュ専科の地方民です。

    作品全体の感想については、ほぼ全文同意です。気楽にぼおっと見ている分には楽しい作品でした。笑 個人的にちと思ったのは、

    ・楽曲が3分で表現する世界観と、お芝居のストーリーが2時間で表現する世界観が微妙にあっていないというか…雪山&別荘でドラマチックなナンバーを歌い上げるのを聞いていると、登場人物の心理に劇的な変化が起こったように思うけど、芝居に戻ったらそんなに劇的展開でもなかったね、と思ってしまう。笑 このミュージカルがストーリーに合わせて曲を書き下ろすのでなく、既存のヒット曲をストーリーで繋いでいる作りゆえのビミョーな違和感かなあと思ったりしました。

    ・男役同士の関係性に萌えるヅカファン 笑。
    昔から
    花組:男役同士の耽美な関係に萌え、娘役には超厳しい
    星組:男役同士は耽美よりバディ感。娘役は「可愛いは正義」

    のカラーは変わっていないですねえ。先日花組ファン(女性)にその心理を聞いてみたところ「贔屓が娘役(女)に取られた、悔しい!という余計な感情に邪魔されず2人の関係に感情移入できるから」と力説していらっしゃいました。パブロは「バイセクシャルなんじゃない?」ああ、そういう考え方もあるのかと勉強になりました。

    ・意味ありげに出てきて特に何も無かったエマのお母さーん、娘と何があったんですかー。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      確かに曲は印象に残らなかったですし、ダイナミックに気持ちを歌で吐露したわりにサクサク話が進むなぁとは思いました。笑
      そして完全に忘れてましたけどエマ母!!結局亀裂ってなんだったの?と思いましたけどハッピーだったらオールオッケーなのかもしれません。
      花組と星組はまさしくですね。そういう違いを考えても面白いのかも…っ!!

  5. しらうお より:

    はじめてコメントします。
    いつもなるほどなあと思いながら、ブログの更新を楽しみに待っている身です。
    たまきさんの代表作ってALL forONEが挙げられると思いますが、過去の話でしょうか。任期が長いとなかなか厳しいですね。
    IAFAは初見の時は微妙な印象でしたが、回を重ねるごとに面白さが分かってきました。曲を覚えたからというのもありますが。中だるみの山小屋部分、もう少し改善してほしいです。

    パブロとフェリックスのペアが腐女子の萌えポイントというのには納得です。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      代表作となるともちろんAFOも上げられるんでしょうけど、実はあまり好みではないという…すいません。
      実は私もそうなんじゃないかと思いながら2回目の観劇が楽しみなクチです!!
      山小屋はねぇ…ああいう場面こそ演出をもっと派手にして良いのになぁと思ってしまいました。

  6. きりん より:

    観劇してきました。大変満足です。思い切ってツアー申し込んで良かったです。
    珠城さんって、気の強い女性に振り回されるといいますか、尻に敷かれるキャラクターが凄く似合う(マスオさん的な…)美園さんも、ド派手な色の衣装といい、お慕いしてます系ヒロインよりも現代女性寄りの方が似合うと感じました。
    あと、私も恥ずかしながらラストのパブロとフェリックスをオペラグラスでガン見してしまいました…。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      月組公演、楽しまれたみたいで何よりです。^^
      確かに、優しい男性に強めな女性といういわゆる現代的な作品と言えるかもしれません。美園さんは顔の主張が強めなので、ああいう役が似合いますよね。
      あの組み合わせも今作の見どころの一つでしょうから、存分に楽しみましょう!!笑

      • みゆい より:

        初コメントです!
        私も、美園さんは華やかになったなぁ…とつくづく感じさせられました。
        まだ、雨に唄えばの頃は無理矢理ゴージャスにしてる感が否めなかったので努力されたんでしょうね。
        先行画像では、「あれ……なんだかデジャブ(まどかテス)」という感じで個性が出せてないのかなと思いましたが、初日映像ではちゃんと美園さんだとわかるレベルになっていたので安心しました。(ただ単に二人の顔の形が似てるだけなのかも)
        パブロとフェリックスは……びっくりしましたね。思わず「はぇーー!?」と声を出しそうになりました(笑)
        暁さんのヒゲがちょっとショックだったのは、私だけかな……。(信長の新公以降苦手意識があるんです…)

        • 蒼汰 蒼汰 より:

          コメントありがとうございます‼
          雨唄のころのピヨピヨ感に比べ、今のゴージャス感は凄いですよね。一気に垢抜け、本人も相当努力されたんだろうなと私も感じます。
          暁さんのヒゲも前に比べればだーいぶ板についていた印象ですかね。とはいえ苦手だと思われてしまう方がいるのも何となく分かりますが…笑