2つ前の記事の続きになります。
前回の記事を要約すると、
「宝塚に歌唱力は必要か?不要か?」と聞かれれば
「あるにこしたことはない」というのが私の考えです。
しなしながら、結局のところ宝塚とは
「男役芸を魅せる」ショービジネスであり、
歌唱力は「ダンス」「芝居」「顔」「スタイル」「所作」「声」などを含め、
それを形作る1つのファクターでしかありません。
ということを踏まえ、
本日はもう一歩踏み込んだ話をしていきたいと思います。
トップ娘役に求められるもの
トップ娘役に求められる資質って何でしょう。
顔?スタイル?歌唱力?ダンス?芝居力?お慕い芸?
私が考える正解は「どれも」。
結局のところ、トップ娘役の仕事というのは
主役であるトップスターをいかにカッコ良く魅せるか、であり、
上記のトッピクスは全て、そのために必要な要素でしかありません。
これらを総合的に踏まえ評されるのが
いわゆる「娘役力」という抽象的な概念なわけですが、
最近になってことさら重要視されているのは「歌唱力」。
ご存じの通り、100周年以降の宝塚は
ミュージカルブームの追い風を受け人気を拡大していきました。
よって宝塚に「歌唱力」を求める観客が増えるわけですけれど、
主役たるトップスターが全員「普通に歌える」わけではありません。
むしろ従来のファンの中には、
歌が不得手だからこそ好きという人もいて、
歌下手というのも立派な個性だったりするわけです。
それは前述の通り、宝塚は「男役芸を魅せる」ショービジネスであり、
そのファクターの中の歌唱力が欠けていたとしても、
最終的には自身の魅力で観衆に気にさせず、
むしろ魅力的に見せられているのでしょう。
だから最近のトップ娘役には歌唱力が求められ、
トップコンビの相乗効果として宝塚らしい夢々しさを構築する。
これが最近の宝塚人事の方向性だと言えます。
変わりゆくトップ娘役像
そんなトップ娘役に歌唱力を求める風潮は、
2015年4月に小川理事長が就任してから、特に強まります。
それはトップ娘役就任直前に、
エトワール修行させる娘役が多いことからも伺えると思います。
(例:真彩希帆、星風まどか、美園さくら、舞空瞳)
というかですね、正直なところ
100周年前後でトップ娘役の色が大きく変わったと思うのです。
なんせ100周年直前のトップ娘役の布陣て
蘭乃はな・蒼乃夕妃・舞羽美海(愛原実花)・夢咲ねね・野々すみ花、ですぜ?
そこから前理事長時代を遡っていくと、
桜乃彩音、陽月華、紫城るい、遠野あすか、白羽ゆり、彩乃かなみ…。
この中で歌は得意と言い切れるのは、たぶん遠野と彩乃くらい?ですよね。
(もちろん「普通に聞ける」人もいますけど。)
いかに当時がヴィジュアル&スタイル至上主義だったかがよく分かります。
そこから「久しぶりに歌える娘がトップに立った」と
諸手を挙げて喜ばれたという逸話を持つ実咲凜音にはじまり、
愛希れいか、愛加あゆ、花乃まりあ、咲妃みゆ、妃海風と95・96時代を迎え、
小川理事長就任後は
綺咲愛里、仙名彩世、真彩希帆、星風まどか、美園さくら、華優希、舞空瞳、
と続くわけですが…やっぱり歌える人の割合が増えている印象です。
それはやはり、男役芸を魅せられるうえで、
劇団側もトップ娘役は歌えるにこしたことはないと判断し
実力安定を取る方向に舵を切っているからと言えるでしょう。
「宝塚」に歌唱力は必要無いという嘘
歌唱力論争についての個人的な結論を書きます。
私は「男役」に歌唱力は必要無いと思いますが、
「宝塚」に歌唱力は必要で有ると思います。
なぜなら、確かに宝塚はミュージカルブームの追い風を受けたけれど、
そのライトファンを掴んで離さなかったのは、
結局のところ「宝塚的美意識」に魅せられる人が多いからです。
そしてその宝塚的美意識の中に、歌唱力は当然含まれます。
スカイステージで昔の作品を見ても、
確かにスター個人にスポットを当てれば、歌が下手な人は大勢いますけど、
全員が下手くそというわけではありません。
人材は適材適所。歌えない人がいるなら周りが支えれば良いわけで、
そんな集団の中でこそ宝塚的夢々しさは生み出されます。
歌唱力はあるにこしたことはありません。
が、だからと言って歌が下手くそな人を馬鹿にするのは違うと思いますし、
逆に歌が上手いがスタイルが悪い人を「宝塚じゃない」と揶揄するのも、
私は違うと思います。
月並みな表現ですが「みんな違ってみんな良い」。
だからこそ劇団は様々なタイプのトップスターを揃えているわけですが、
逆にそんな充実したラインナップにするためには
歌唱力に限らず舞台技術が高いトップ娘役が重用されることになるのは、
当然の流れだと言えるでしょう。
むしろ、宝塚人気が100周年以降も維持しさらに増大し続けているのは
このトップ娘役の総合力の高さも重要事項の1つだと思います。
特に小川理事長就任後の組体制は
どのトップコンビも良い補完関係を築いてると思いますので、
今後も是非この流れが続いていって欲しいと一ファンとして願っています。
そして改めて、その美意識と世界観を観客に届けるにあたり
宝塚という総合芸術に確かに歌唱力は必要だと私は思います。
蛇足:今後のトップ娘役人事について
こっから蛇足です。
こんな記事を書いといてですよ、
現トップの真彩と美園の退団が決定、星風もカウントダウン中。
最近就任した華はキラキラ特化、舞空は「普通に聞ける」レベル。
トップ娘役リーチの潤花は不得手で夢白あやは普通。
…あれ、歌える次期トップ娘役がいなくね?
真彩レベルとは言わないまでも、
少なくとも星風、美園の歌唱力を持つ娘役が1人は欲しい。
ということもあってか、
やっぱりトップ娘役への波が来てると思うのですよね。
星組の有沙瞳。
だって彼女、歌える方のチームですもの。
あるいは天彩峰里…は、難しいかなぁ。
情勢的には有沙の方が目があるわけですけれど、果たしてどうなることやら。
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コメント
あの方の時代ですが、
トップは最低限の歌パートにとどめ、
みゆ&だいもんが歌いまくり、
ダンスのバックコーラスでは にわさん、ヒメ、さらさが多用されてました。
魅せ方が良ければ不自然ではありません。
普通扱いのひっとんは食聖で追うように観ましたが、
私の感じではオーラだけでなく歌も良く、「これは文句無しだわ」と思いました。
くらっちも歌は好きですが、聖乃あすかではないほのかはもっと歌えると思います。
アロイジアで確信しました。
コメントありがとうございます‼︎
ナイス例としてその体制を挙げて頂いたので補足すると、そのトリデンテ体制で言えば
希代の芝居役者・咲妃と希代の歌上手・望海に、主演者として霞まずむしろ包容力すら感じさせる早霧、というのが人気の鍵だったと思うんですよね。
例え歌が下手であったとしても、魅力的に映すよう采配するのが宝塚人事の求められることですし、
これこそが宝塚の魅力なんだなぁと、この記事を書くにあたり久しぶりに当時の雪組公演を見て思いました。笑
ご無沙汰しております。
最近、望海風斗さんと真彩希帆さんの雪組ファンになり、宝塚初観劇もさせてもらい、こちらを楽しみに拝見しているものです。
あれから雪組千秋楽のライブ放送のためにスカイステージに加入し、どっぷり宝塚に浸かっています。笑
ど素人ですから、ここまでの生徒さんの成長ヒストリーもがんばりも全く知らず。スカイステージの映像と音声を、なんとなく興味のあるものを流し見したり録画をしています。
そしてやはり
この声、歌い方すてきだなあ!
とか
ん?何これ?まじなの?(否定的でごめんなさい笑)
と、画面にいちいち反応する日々です。
どなたがどうとか、素人過ぎてここでは書きませんが、やはり世の中で歌上手と言われている、そして難ありと言われている方なんだなあと思ってしまいました。
そして、私が宝塚にはまらせてもらえたのは雪組トップコンビだったからなのだなあと。
素人、ライトファンにはとても歌唱力は大切だと思います。特に私のようなやたら観劇歴だけは長いものには。
これからもっと宝塚観劇歴が長くなると感想も違ってくるのでしょうかね?
何十年も前に観たけれど、はまることは無かったにはまらせてくれた雪組トップコンビに感謝です。
取り留めなくて申し訳ありません。
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科に戻りたい地方民です。
毎年音楽学校を1,000人受験して、だいたい男役志望20人、娘役志望20人が入学していますけれど、受験生の男役志望者500人、娘役志望500人でもあるまいと思うんですよ。
日本人の18歳女性の平均身長が159センチくらいなので、受験生が1,000人いて、169センチ超えの受験生が過半数とも思えない。多分娘役志望のほうが激戦区。
男役志望で、170センチ以上あって、踊れて、顔よし、華あり、だったら、歌は「特訓すれば歌えるかも」と、伸びしろに期待して合格させることもあるのでは、と疑っております(確証は無い)
歌うまはスイタル難が多い、というか、大柄な日本人女性の割合が少なくて、その中でさらに歌える人は、いつの時代もレアになるのでは。
娘役さんも、元来女性である男役の声域と魅力的にデュエットするためには、女性として出せるギリギリの高音域を歌わないといけないので、大変なことと思います。
宝塚がコロナ禍を乗り越えて、110周年、150周年と続いてほしいですが・・・
たぶんそのころのヅカオタも、今と同じようなことを論争している気がする(笑)
こんばんは。
いつも楽しく拝見しています!
娘役さんの歌唱力は本当に大事だと思います!
次世代の歌えるトップ娘役、、。
彩風咲奈さんの相手役、みんな有沙瞳ちゃんもしくは夢白あやちゃんじゃないかと言ってますよね。
私もそう思ってました。
でも、今までの劇団の傾向を見てて、10年目を迎える有沙瞳ちゃんは現実、可能性低そうに感じます、、、。( ちなみに私は有沙瞳ちゃん大好きです!!
意外なところに来そうだなーって考えてて、出てきたのは桜庭舞ちゃんです!
今回急に新公に抜擢。
いまからグイグイ押して言って彩風咲奈さんがトップ就任にまで間に合いそうです。それに桜庭舞ちゃんは元雪組。お歌も歌えるトップ娘役になりそうだと思いました!
話がズレてしまいまとまりがなく申し訳ございません。蒼太さんはどう思われますか??
これからも記事の投稿楽しみにしています。
はじめまして。
いつも楽しく拝読しております。
今回の二つの記事ですが、うんうんと頷きながら超超ライトファンである私自身の宝塚に求めているものを考えるきっかけになりました。
ちなみに私は『ひかりふる路』からどハマリした新規ファンで、それまでは外部のミュージカルのみを観劇していました。
そして白状すると、どハマリする前にDVDで観賞した雪組トリデンテ体制の頃の舞台はトップさんの歌唱が気になりすぎて宝塚そのものが苦手になりかけていたんです。
しかし不思議なもので今同じ作品を見直すと調和が取れて楽しい舞台なんですよね。
まさしく、蒼汰さまの仰る「宝塚的美意識」にハマったライトファンなのだと思います笑。
ライトファンへのとっかかりとしては歌唱力の高い組が必要だと思います。
そしてそれとは別に、そのコンビでないと作れない世界観があるのであれば、全ての組で歌唱力が必ずしも優先される訳ではないの頷けますし…。
しかし、こうやって人事にヤキモキするのも宝塚の楽しみ方の一つでしょうから本当に上手く出来ていると思います笑。
コメントありがとうございます‼
いやーすごく分かります。実は私も全く同じような流れだからです。笑
実はこれ別の記事で書こうかと思っていたのですが、最初は歌ウマに惹かれた後に、宝塚的美意識にはまっていって
歌が不得手な人の映像を見ても気にならなくなり、むしろ楽しく見えるというのはあると思うんですよねー。いやー不思議です。
明日海りおが入り口ジェンヌと言われたのは、ライト層へのとっかかりとしての歌唱力、ヴィジュアル等が兼ね備えていたからなんだなぁと思ったり。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
前々回より引き続いての記事、とても楽しく拝見させて頂きました。蒼汰さんの仰る通り、歌唱力はあるにこしたことはないですね!そして、何か苦手なものがあるからこそ応援したくなる、というのもあるかと思います。
それこそ早霧さんや紅さんのトップ時は、スターで舞台要素を補完し合っていた印象で、個人的に組の結束力、チーム感が感じられてそれも宝塚の魅力の1つとして好きでした。
気になるのは、前々回の記事で蒼汰さんがあげられていた、音を外すタイプのトップさんです。
私は宝塚でありがちな、主人公とヒロインがお互いの過去を打ち明けたあと、「なぜだか君(あなた)に惹かれているかも」的な歌うようなシーンが大好きでして、、、笑
そこで音を外されると、ハラハラとした雑念が入ってしまい、感情移入ができないので残念に思います。
(東京の観劇前ですと、観劇前に音楽サイトですでに楽曲を購入できる場合があるため、事前に曲を聴いて気持ちを高めて観劇するため、素人ながらにも音が取れてないと気になるのかもしれませんが)
ただ、現花組トップコンビの出世作、はいからさんが通るは、スカステ放送しか見れていませんが、私には許容範囲内だったので、当日の御二方のコンディション、いわゆる運、みたいなものもあるかもしれません。
宝塚ファンでない友人を観劇に連れて行きたいときは、現体制だと、初級雪組から入って、中級星組、宙組で歌に疑問を抱かせることなくキラキラとした男役像を見せ、上級、、、となるかなと個人的には思います。
いつも思っているのですが、有沙瞳って歌うまですかね?海乃美月と同じく低音は上手いけど高音はイマイチかなと思っているのですが、、、。エルベの礼真琴とのデュエットも今ひとつだった気がしますし。2人とも龍の宮やIAFAで低音ばかり歌っているだけでロミジュリで乳母でもやろうものなら荒が見える気がします。
コメントありがとうございます‼
まぁ正直いつぞやのエトワールも微妙だった記憶があるのですが…。まぁ歌える方チームではあるかなぁと個人的には思っております。
読んでてずっと有沙瞳のこと話すんじゃないか?と願っていたので良かった。
有沙瞳にトップになってほしい!
雪組でも月組でもどちらでもいいので!
宝塚フアン歴約10年、できる限り劇場へ観にいきたい派、私設フアンクラブは入っていないのでライトフアンという認識ですが、今回の記事で、好きになるスターに歌上手を求めない時点で、自分はディープなのかと認識を改めました。
宙組フアンの友人に誘われて初観劇、オペラグラスも持っていなかったので、美貌のトップコンビの魅力が分からず、3番手の歌声に感心しておりました。
2回目はオペラ持参し大和さん陽月さんの美しさにうっとり、3回目で蘭寿さんに目線もらって沼に落ちました。
その後は、好きになったスターの歌は気にしません。
劇場では、生オケや音響の効果、生特有の高揚感もあり、オペラ握り締めているような時はそれどころじゃないし
(笑)
映像、特にスカステみたいに自宅で小さい画面で(ましてや、ながらで)となると、スターのオーラとか超絶スタイルの魅力が分からないのですよね。
歌上手だけどスタイル難とか、地味系の人にとっては欠点が目立たず、歌声の差は目立つから都合がよい。
はいからさんは絶対生で見たい‼︎のですが、チケット取れるかどうか…
フアン歴が長いのに、歌苦手スターにウインクしてる暇あったらボイストレーニングしろとか、実力ない人をトップにする劇団はおかしい、とか文句を言い続けている人が本当に不思議です。
世界中で宝塚にしかないキラキラスターを愛でる文化は、劇団が誇りを持って守り続けてほしいです。
わかりやすいように、名前を変えました(笑)
前編後編と読ませていただき、概ね同じ意見だなと思いつつ、「どのトップコンビも良い補完関係を築いてる」というのを見て、ん?某キラキラ組は…?雪と月の次期は大丈夫…?と思いましたが、その後に蛇足があり、「ですよね」とホッとしました(笑)
キラキラ組はせめて、歌を補完できるかデュエダンで魅せられるか、どちらかの相手役を選んで欲しかったと、今でも思っています。
可愛いんですけどね^^;
さて、次期雪トップ娘役、ここへ来て急に小桜ほのかちゃんでは…と思い始めています。
歌うまで、理事相手役(予定)、というだけで、あとは勘なのですが。
有沙瞳ちゃんの方がスポンサー的には良さそうですが、新鮮味がやや薄れているかなと感じます。
また、夢白あやちゃんという噂が薄めの関係者(笑)の間でまことしやかに囁かれているようですが、さすがに早いのでは?などと思っています。
まぁこれは人それぞれ勝手に予想するしかないですね。
蒼汰さんの結論の通り「男役に歌唱力は必要ないが、宝塚には歌唱力は必要」に納得はしますが、個人的には、5組のうち1つくらいは「歌うまトップコンビ」と評される組があって欲しいなぁ。
だいきほ退団後しばらくは無理そうですが…。
ちなみに私は、宝塚は歌だけじゃないと思っているけれど、どんなに素敵な容姿でも歌がズッコケだと「贔屓」と言えるほど好きになることはないです(軽く応援はしますが笑)。
そしてまた逆も然りだったりします。やはりビジュアルも大事ですしね…贅沢ですが。
結局バランスなのかな。