男役スター像の変容と「ホスト芸」【雑記】

「女性の化粧と前髪を見れば時代が分かる」なんて言葉がありますが

流行というのは時の流れとともに全く違うものになるわけで

後から振り返ると見ていて面白いものがありますよね。

 

ということで本日は

宝塚の男役像の変容についての雑記です。

 

男役スター像の変容を思う

 

偏見を承知で書きますと、

少しばかり前、具体的にいえば2000年代から2010年くらいまで、

男役スターってホストっぽかったですよね。

 

いや、もちろんここでいう「ホスト」というのは

女性に媚びを売る水商売の男性という意味ではありません。

 

当時のイケメン像を一言で表現すれば「ワルっぽい男」

ジャニーズで例えると、たぶん(当時の)KAT-TUNみたいな。

 

柄物のシャツの襟を立て、黒ジャケを羽織り、

十字架だの鳥の羽だのアクセサリーがじゃらじゃらしてて、みたいな。

 

そんな「ワルっぽさ」「トッポさ」「シャープさ」の中で

ふと見せる愛想や職人芸を究極に煮詰めたのが、

いわゆる宝塚における「ホスト芸」だと思うのです。

 

…というか、当時AQUA5がバラエティ番組に出ていたときに

「ホストに間違えられる」とか

「ホスト御用達の服屋で買い物をする」とか

そういう話をしていたような記憶があるんですよね。

 

それをテレビで見ていた当時学生だった蒼汰は

「うーん、ホストっぽい」と思っただけかもしれません。笑

 

 

そして時は流れ「ワルっぽい男はダサい」という風潮になり、

今は草食系、塩系男子、そして神対応が褒めそやされる時代になりました。

 

その変容とともに、

もちろん宝塚の男役像も変化しています。

 

偉大なる元トップのOGたちがバラエティ番組で話すような

娘役相手ですらクールな男役像ではなく、

いわゆる「品の良さ」に重きを置いたスター像へと変化していっています。

 

これは当時と今の入出映像を見比べると顕著ですけど、

時代の変化とともにスター像が変わっていくのは

当然と言えば当然なのかもしれませんね。

 

七海ひろきと桜木みなとの芸風

 

こっからが本題です。

 

私が勝手に思っているホスト芸が色濃いトップといえば

(※「ホスト芸」とは上記のようなシャープな男役芸のことです。)

水夏希、瀬奈じゅん、大空祐飛あたりなんですけど、

 

このホスト芸の系譜を引き継いでたのって

たぶん89期の七海ひろきだと思うのです。

(彼女の場合は「癒し系ホスト芸」という亜種に近いですが。笑)

 

そして七海の退団により、

ぽっかり空いたホスト芸スターの枠に現在猛攻を仕掛けているのが

95期の桜木みなとなんじゃないかと思うわけで。

 

というわけで皆さん、

桜木のファーストフォトブックのメイキング映像ご覧になりました?

もうね、笑っちゃうくらい2000年代ジェンヌなんですよ。

 

オープンカーに深紅の薔薇の花束だとか、

バイクに跨ってワイルドでロックにキメちゃう俺だとか、

 

そもそも「ラグジュアリーなパーティーで、素敵な彼に二人でパーティーを抜け出そうと囁かれたら!」という説明文の時点で、ものすごいホスト芸臭。

(※何度も言うように「ホスト芸」とは上記のようなシャープな男役芸のことです。)

 

一番顕著だったのは海の撮影シーンで、

同じ花組生と仲良くワイワイした水美、

曇天の海でフォトジェニックに憂う朝美と違い、

恰好といいポージングといい、ホストの夏休みにしか見えないという面白さ。

 

さらに扮装シリーズは大空の『カサブランカ』を選び、

対談ゲストに七海ひろきを呼ぶなんて

もう絶対狙ってやってますやんって話なわけで。

 

最近はシヴァーブリンやベネディクトなど、

そういう役が多いからかもしれませんが

(劇団側がそう知略を巡らせているとも言えますけど)

 

桜木が腹を据え、ホスト路線に舵を切ったのかなぁと思うと

非常に面白く、また興味深いなぁとスカステを拝見していました。

 

桜木みなとの正念場に思う

 

そもそも桜木は、可愛らしい顔立ちに穴の無い舞台技術、

何よりも真上に強烈な個性の愛月ひかるがいたことによって、

どうしても優等生的イメージが強い印象でした。

 

そんな中、愛月の異動に伴い、

3番手スターとして大いなる一歩を踏み出した今はまさに正念場。

 

本人もそれが分かっているのでしょう、

野心やギラつきを隠さなくなってきているのが非常に興味深いです。

 

スカステや雑誌等でも「脱カワイイ宣言」的なことをよく話していますし、

立ち振る舞いや芸風を見ても、物凄いギラギラしている。

その過程の一つが、今のホスト芸路線なのかもしれません。

 

それが従来のファンに受けるか否かは置いといて、

基本的に向上心の強いギラギラジェンヌ大好きな自分としては

 

いやー、推せるわー。笑

 

私は以前、彼女を「安定がゆえの正念場だ」と記事に書きましたけど、

やっぱり「上を目指したい」とギラついてくれる方が

見ていて断然面白いですよねっていう。

 

もちろんこれが功を奏すのかはまだ分かりませんけど、

少なくとも何とかせねば必死にもがく姿を見ると、

応援したくなるのがファン心理というもの。

 

彼女がその路線を突き抜けるのか、

はたまた新たなスター像を生み出すのか、

今後の行方を見守りたいと思います。

 

1年ぶりの「95期生考察シリーズ」

 

そしてこれで95期7人は

 

ヒジュアル特化型ダンサーの柚香、

舞台技術特化型ダンサーの礼、

古き良き安定感と芝居力の月城、

古き良きホスト芸と穴の無い舞台技術の桜木、

一般受けとジャニーズ芸の朝美、

マッチョ型ダンサーと判官贔屓の水美、

男顔と劣等生からのタカラヅカドリームの瀬央、

 

と、なんだか綺麗に住み分けがなされているわけで、

今後の行く末がきになるところ。

 

というわけで続きは年末にやろうと計画中の

1年ぶりの「95期生考察シリーズ」に続きたいと思います。

 

95期箱推しとしてはもちろん全員のファフォブを購入しているのですが、

まだ桜木みなとのだけ手に入れておりませんので(ごめん)

見次第まとめていきます!!

 

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コメント

  1. 絢香 より:

    先日、龍の宮を観に行ったのですが、控えめに言っても最高でした。
    このタイミングでこの作品当たる瀬央さんは持ってるなと。
    星組には愛月さんも来ますが、この勢いのままもっと上に行けたらいいなと95期好きの私は思いました。
    龍の宮、スカステ放送の際は是非ご覧ください。

    • ちゃとらし より:

      こんにちは!
      読んでいてなるほどーと思いました。本人が志向しているのか劇団の戦略なのか分かりませんが、確かに95期の中での差別化、キャラ確立に向けて今年はギラギラしている印象強いです。
      宙組の中で真風さん芹香さんを相棒感で魅せようとすると、必然的に桜木さんが悪役ポジになるし、真風体制のバランスが取りやすいのもあるかもしれませんね。
      宙組初の生え抜きトップなるか、ドキドキです。

      • 蒼汰 蒼汰 より:

        コメントありがとうございます‼
        確かに真風&芹香のバディ感との対比として悪役が回ってくるからこそ美味しい立ち位置になっているのかもしれません。
        それにしても今年は悪役が続いていて役得だなぁという印象です。果たして生抜きトップになるのでしょうかね?

    • ミルクティー より:

      以前昔のスカステを見ていたら、男役が女性を口説く時に「俺」と言っていて、宝塚の男役は一人称俺なんだ!と驚いた記憶があります(笑)

      今の若手は自分の事を私と言っているので、求められるもの、時代は変わったんだなーと思いました。

      先日宙組観てきましたが、ギラギラした目つきと鮮やかなブルーの衣装がとても似合っていて、思わずオペラで追いかけてしまいました。
      悪役や嫌な役をやっても上品さを失わないのが、桜木みなとの魅力だと思います!

      ギラついてるのも楽しみですが、エリザのルドルフや天赤のザナンザのような繊細、優しい役も好きでした。両方出来ると強いですね!

      95期推しなので、考察とても楽しみです!^ ^

      • 蒼汰 蒼汰 より:

        コメントありがとうございます‼
        なるほど、一人称にも時代が表れるですかね…言われてみたら「俺」とか言ってそう。笑
        確かに「悪役や嫌な役をやっても上品さを失わない」というのが桜木の魅力であり、かつ稀有なスター性なのかもしれません。
        ぜひさらなる高見を目指して成り上がって欲しいなと私も思います!!

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      見に行った管理人masaさんも絶賛してました。佳作を引き当てるのも実力ですよね。
      スカステでの放送が楽しみです!!

  2. 美穂 より:

    こんにちは!
    相変わらず鋭い考察、毎回唸っております。
    今回の記事でちょっと気になったのですが「功を奏す」ですよね?
    「功を制す」ではなく?

    細かくてスミマセン。
    「95期生考察シリーズ」も楽しみにしています。

  3. なえ より:

    こんにちは
    フォトブックをついついすべて買ってしまいたくなります!(キリがないでしょ と自分に言い聞かせて現在1冊のみ購入

    95期すみわけ 確かにと思いました
    それぞれ持ち味をさらに伸ばし 苦手分野は他の方の良いところをお手本に 切磋琢磨していってほしいと思います!

    考察シリーズも楽しみにしています

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      95期合同インタビューがあるので結局全部欲しくなるという、劇団の策略にまんまとはまりました。笑
      互いの持ち味を生かして魅力を反射し合うような、仲間であり同志でありライバルであってほしいですね。

  4. らすく より:

    こんにちは!
    95期生好きなので今回の記事とても興味深く読ませていただきました!
    桜木みなとさん、最近特にかっこいいですよね!
    わたしも野心燃やしてギラついてる桜木さんがすきです。

    95期生考察シリーズ、非常に楽しみです♡

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      最近のギラギラ具合は本当に凄いですよね!!ぜひこのまま突っ走って欲しいと思います。^^

  5. ハム より:

    分かります!確かにあの頃のスターさん達は、心の奥底にある悪い男に騙されたい願望を満たしてくれていました。
    ジェンヌさんは本当には騙さないから安心して応援できました(笑)
    品よくニコニコも素敵ですが、もっとニヒルで影のあるスターさん増えても面白いと思うんですけどね。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      なるほど、舞台上で起こる架空の「悪い男に騙されたい願望の成就」って、確かに宝塚でしか成立しない芸風ですよね。
      宝塚に限らず最近はコードがうるさい情勢なので、なかなかそういうスターさんが出辛い雰囲気なのかもしれません。
      そういうスターさんが出てきても面白そうだなぁ。

  6. あやこ より:

    薄く開いた口元、冷淡な流し目、ふんわりリーゼント・・・全ツからイスパニアにかけての、昨今の桜木さんのホスト芸はお見事!真風&芹香の余裕綽々お兄ちゃんコンビに、よい刺激を受けているようにも見えますね。
    それがあってか、ショーやアドリブでふいに見せる、真っ白い歯の笑顔が効く!かわいい!笑
    押しが弱いだ、今ひとつ地味だと言われる「オールマイティーあるある」を、彼女が自ら蹴破ろうとしている瞬間を見せてもらっているような気がします。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      真風&芹香のバディ組に反射して、彼女の新しい魅力が見出されている感じですよね。
      さらにそこにもとの品の良さとのギャップがあるわけですから、確かに良い傾向なのかも?
      ぜひそのオールマイティあるあるを良い意味でぶっ壊して欲しいですね!!

  7. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。

    男役さんのホスト芸・・・あー今はワル男とかそう言うんですねえ。90年代のころは「男役のキザ」という便利な言葉がありました。(用例:男役なら襟立ててキザらんかい!)

    さらに昔、昭和のころは沢田研二さんが映画「カサブランカ」を本歌取りにした「カサブランカ・ダンディ」というハンフリーボガードへのオマージュを歌っていて、

    「ボギー♪ボギー♪あんたの時代はよかった。男がピカピカのキザでいられた。男の痩せ我慢 粋にみえたよ♪」

    今は宝塚界隈ですら男の痩せ我慢とかダンディズムとか言わなくなりましたねえ。個人的には男の子のそういうカッコつけ好きなんだけどな。桜木さん、古き良きキザ芸を現代の味付けでよみがえらせてくださいね。楽しみが増えるわあ♪

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      花組に代表されるような「男役芸」いわゆるキザりでも、昔にくらべるとやっぱりあっさりなんですかね?
      宝塚に限らず、今は時代的に品の良さが求められますから余計にそういう風潮が減ったのかもしれません。
      それこそ沢田研二の勝手にしやがれ的な世界観の似合う人もいなくなりましたし…笑
      ということで桜木さんが新たな魅力を携えて、スターとして成長されるのが今から楽しみですね!!

      • こんちゃん より:

        コメントありがとうございます。ライビュ専科の地方民です。

        今から四半世紀前、大震災とエリザ初演前の古き良き宝塚はキザ一辺倒でもありませんでした。

        花組:安寿さんと真矢さんの気障な「振付:ANJU」の世界
        月組:研6でトップ就任の天海祐希が「TVドラマみたいなナチュラルな演技」で人気
        雪組:一路さんは東宝の音大出身のミュージカル俳優みたいな演技だなあ
        星組:紫苑さん・・・真風さんと愛月さんを足して煮詰めて発酵熟成させたような・・・シュールストレミング(笑)
        宙組 まだない

        当時TVの世界では、昭和歌謡や往年の銀幕スターのような作りこんだ虚構の世界が古臭いものとなり、等身大の自然体なドラマや演技が主流となっておりました。宝塚でもその流れを受け、

        若い世代:「従来の宝塚の演技はTVドラマに比べてクサい。天海さんの「ナチュラルな男役」が格好いい!

        オールドファン:「天海は若くて男役芸が身に染みていないんだ。ナチュラルな演技で柴田作品の男女の愛憎劇は表現できない」

        と意見が分かれていた印象です。生徒さんにも天海さんの信奉者は多くて、男役さんの演技はどんどん薄口になっていくのかしら、と思っていたところ、紫苑さんが音校講師となったり轟さんが理事となって後輩に指導するようになり、劇団は古風な男役芸の継承を意識しているんだな、と感じました。

        そういえば今のライトファンは「宝塚の演技はTVドラマと比べてクサい」とかあまりおっしゃらなくなりましたね。TV至上主義でもなく多様な表現に寛容になってきたのかしら。

        • 蒼汰 蒼汰 より:

          コメントありがとうございます‼
          拝見して思ったのですが、天海さんの登場によりナチュラル路線の大頭が始まったのかもしれませんね。
          今のトップ世代はそれこそ天海さん好きも多そうですし、少なからず影響を与えたんでしょうね。

  8. いのさん より:

    私も95期路線組では瀬央さんの勢いが凄いなあと思っています。
    ライトファンなので雪組以外はスカステでしか見ていませんが、見るたびにカッコよくなっている印象があります。トークも面白いですし、悪役から好青年役までこなせる幅の広さを感じます。何より毎回持てる力の全てを出しきろうとしている所に清々しさを感じて、いいなあせおっち…と思います。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      瀬央さんは本当に最近の注目株ですよね!!あまりスポットが当たっていなかった分、少ないチャンスをものにしようと必死だし、
      何よりも一回の成長っぷりが本当に凄い!!ということで管理人masaさんも非常に楽しみにしているそうです。笑
      これからのさらなる活躍に期待したいですね。

  9. kun より:

    いつも更新を楽しみにしております。
    95期のタイプ分類の表現に、流石と感心させられます。
    考察シリーズ待っております!

    「私が勝手に思っているホスト芸が色濃いトップといえば」のところ、
    『瀬名じゅん』となっていますが、『瀬奈じゅん』ですよね。
    変換ミスだと思いますので、訂正お願いします。

  10. ちょっこー より:

    この記事を読んでから見てみると、とても面白い!

    というか、興味深い笑

    桜木みなと、正直好きでも嫌いでもない。
    というよりも、優等生のお坊ちゃんすぎて興味が湧かなかったんです。

    この記事を読んで、少し興味持って見てみたら、面白い!

    古き良きクサくてクドいカッコつけの男役って最近少なくなってきたと思ったんですよ。

    そういうのがどちらかというとあんまり得意じゃないので2000年代の宝塚苦手なんですけど、

    1人くらいこういうのがあっていい!

    第二の大空祐飛になって欲しいですね!
    初めて桜木みなとを注目しようと思いました☆

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      彼女自身も「優等生のお坊ちゃん」だと思われているのがよくよく分かっているのでしょう、一生懸命殻を破ろうと必死ですよね。
      実は私も2000年代宝塚があまり得意ではないのですが、やはりそういうスターを求めている層は必ずいるわけですから、ぜひそこに訴求できるよう進化していってほしいですね。
      今後も要注目です!!