5年という歳月の無常さを『翼ある人びと』に思う【雑記】

スカステで放送された『翼ある人びと』を初めて見たんですけど

めちゃめちゃ面白い作品ですね、コレ。

 

名作だとは常々聞いておりましたけれど

まさかこんな引き込まれるような大作だとは…。

 

朝夏まなとの真っすぐで朴訥とした純真さと

怜美うららの儚い美しさは

さすが当て書きだけあってピッタリな役どころ。

 

脚本・演出は上田久美子氏…ということで

まんまこの2人の退団作『神々の土地』と同じ布陣なんですね。

 

一幕ラスト、ハラハラと枯葉舞う舞台で見つめ合い対峙する朝夏と怜美…って

これ『神々の土地』の最後と全く同じ演出じゃないですか‼

(実は他にも似ているシーンが結構あるんで、探してみるのも楽しいです。)

 

同じ主演者・作家だと

こういう本歌取り的な粋な演出があって面白いですねぇ。

 

というわけで、この『翼ある人びと』が上演されたのは2014年2月。

今からちょうど5年前ですね。

 

本日は、この公演を通して思ったこと、

5年という時の長さに起こる悲喜こもごもを雑記としてまとめます。

 

宝塚は「スターの成長物語」

 

この公演を見て一番驚いたのは

朝夏まなとが歌えてなさ過ぎてビックリたことです。笑

 

私はトップスター時代の活躍しか深く知らなかったので

個人的には彼女のことを「特に穴が無いオールマイティな舞台人」

だと勝手に思っていまして

 

ネットではよく「昔は下手くそだったのに」なんて書かれており、

個人的にはいまいちピンときていなかったのですが

うん、確かに全然歌えていない。

 

何がビックリしたかって、

それは彼女のスターとしての成長ぶりです。

 

当時これだけの歌唱力の人が、トップスター就任を経て

あそこまで聞かせられるまでに実力を引き上げたということ。

 

それはもちろん、彼女が物凄い努力をしたということに他なりませんが

逆に言えば、今歌唱力がイマイチな人でも

努力すれば朝夏レベルにまでなれる か も しれないとも言えるわけで。

 

なので皆さん、もし今舞台を見ていて

我慢ならないレベルのスターさんがいたとしても

ぜひ温かい目で見て差し上げましょう。笑

 

5年という歳月で変容する価値観

 

この『翼ある人びと』が上演された2014年といえば、

宝塚100周年の年です。

 

5年前である2014年1月、大劇場では

柚希礼音主演『眠らない男・ナポレオン 』が上演されていました。

懐かしいですねぇ…。

 

そしてこの年の4月に記念式典が行われ、ニュースでも取り上げられたし、

OG含めバラエティなどにも積極的に登場、

「宝塚」を必死に売り込んでいたのを今でも覚えています。

 

そんな年の2月に上演されていた、この『翼ある人びと』は

つまり現在の宝塚バブルが巻き起こる直前の公演であることを思うと

なんだか感慨深いものがありますね。

 

ちなみに、この『翼ある人びと』と

ほぼ同時期に行われた公演はというと

 

2014年1月 月組バウ公演『New Wave! -月-』

主な出演者:美弥るりか、宇月颯、鳳月杏、珠城りょう

 

2014年5月 星組バウ公演『かもめ』

主演:礼真琴

 

2014年6月 花組バウ公演 『ノクターン』

主演:柚香光

 

と、今をときめくトップスター、二番手スターたちが

続々とバウ公演主演を果たしていた時期であり、

若手として研鑽を積んでいる真っ最中だったわけですね。

 

柚香・礼の2名は、路線スターとして最短距離を走る2人ですので

もちろん一概には言えませんが、でも5年もあれば路線の道を爆進し、

ある程度の位置にまで行けるんだと改めて思い知らされます。

 

 

ちなみに、この2014年10月に

真風涼帆が宙組へ組替えしてくることが発表されるわけですから

この公演はトップ退団に伴う大編成直前のタイミングでだったと言えます。

 

その中で『翼ある人びと』の劇中では

ヒロインである怜美うららはその美貌を振りまき

期待の若手として愛月ひかるが美味しいところでカッコよく決めています。

 

この2人が片方はトップ娘役にはならず退団し、

片方は専科へ異動し一時的に路線スターの道をステイすることになる、など

この時一体どれだけの人が予想できていたでしょう。

 

まぁ何が言いたいかと言うと、

「この人は絶対トップになるだろうな」という予想ほど

アテにならないものは無いんだな、ということです。笑

 

路線として大切に育てられたスターでも

5年という月日が経て、価値観や事業企画としての変容があったとき

どうなるかなんて、まさに分からない。

 

もちろんそれは、これからの5年間にも言えるわけですから

果たして2024年の宝塚はどうなっているんでしょうね。

 

5年という歳月の無常さ

 

今改めて『翼ある人びと』を見てみると、

一つの舞台芸術として非常にハイクオリティでありながら

あまり「宝塚らしくはない」作品であると思いません?

 

スターとしてのカッコ良さの追求より

人間の心情や実在に迫る表現、ストーリー展開でありながら

舞台という「娯楽」を成立させる、ドラマティックな内容って

これまでの宝塚から考えると、だいぶ異質だったんじゃないかと思うのです。

 

けど、この「ウエクミ芸」は厚く支持され

翌2015年『星逢一夜』にて大劇場デビュー、

絶大な評価を受け、早霧と上田の人気を決定づけることになりました。

 

逆に、いわゆる「純文学系」の作品って

たぶん減っていってるんじゃないかなーと思う一方で

早霧の成功により「2.5次元」的作品が増えているのも印象的です。

 

さらに、この5年の大きな変化といえば

このブログでも何度も取り上げていますが

ビジュアル至上主義から実力偏重へと大きく舵を切り返したことでしょう。

 

その結果、怜美はトップ娘役にはなれなかったし、

御曹司であったはずの愛月ひかるは修行の道へ行かざるを得なくなりました。

(もちろんそれだけが理由ではありませんが)

 

これらを踏まえ、改めて『翼ある人びと』を見たとき、

そんな大きな価値観の変容の、夜明け前的作品だなぁと感じざるをえません。

 

作風は非常に「今の宝塚風」でありながら

この5年間で主要キャストの朝夏・緒月・伶美は退団し、

さらに愛月も今年の2月をもって宙組から組替えすることになっています。

 

そう、5年という月日は、短いようで長い。

 

スターが舞台人として大きく成長したり、

路線の道をひたすら邁進していく横で

脱落したり、自分からその路線を降りる人もいる。

 

さらに宝塚という舞台芸術がより大衆化し、

一種のブームとして観客動員数を増やし、

事業として安定した収益が見込めるようになるだけの時間でもある。

 

そんな5年という月日は、まさに実り多き素晴らしい時間だったとも言えるし

残酷極まりない時間だったとも言えるのだと思います。

 

あぁ、かくも儚くなんて無常なことでしょう。

『翼ある人たち』を見て、皆さんは何を感じますか?

…なんて、今日は詩的に〆てみます。笑

 

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コメント

  1. 横山薫 より:

    蒼汰様
    初めて投稿します。
    「翼ある人々」を取り上げて下さって、あまりに嬉しく投稿しました。私は、超凡人のミーハーなので、どなたの脚本、演出などわからず スカステを見漁っていた時、「翼ある人々」を見て、今でも私の中のベスト3に入る作品です。
    後に、ウエクミであることを知りました。朝夏ファンではありませんが、あの大きな目から、ぽろぽろと涙を流しながら芝居する朝夏さん、カッコいい愛月リストに萌えました。と、こんな話をしたくてたまらなかったのですが、なかなかこの作品の話題は共有できなかったので、とても嬉しかったです。
    あまたある、宝塚のブログの中でも蒼汰さんの考察が最も頷いております。
    いつも、楽しみにしています。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      非常によく分かります…朝夏さんがまさかここまで「芝居の人」だと思っておらず、本当に引き込む演技でした。
      そして愛月さんも、あの若さとハッタリ感のオーラが凄いですよね。色んな意味で素晴らしい作品だったと思います。
      そんな素敵なことを言っていただけるなんて恐縮です…これからもよろしくお願いいたします。

  2. めー より:

    感想が深過ぎてミーハーな私には奥深いなーと思っております(爆)

    私も宝塚復活直後だったので観ていなくて、以前、友人に借りて観ました。
    友人からはとても素晴らしい作品だと聞いていたのですがその通りでした。
    心の琴線に触れるような、少し苦しくて少し切なくて、それでいて前を向いているような。

    おかげでウエクミ作品を外せなくなりましたよ。(正塚作品も好きです。)
    宝塚な中では新たな旋風だ!と1人、わくわくしてました笑

    たしかに朝夏さんは歌えてませんし、伶美さんに至っては歌唱シーンてありましたっけ?な作品。
    しかし、演者としては2人とも素晴らしいと思いました。

    朝夏さんが上手くなった、と感じたのはトップお披露目公演でしょうか。

    芹香さんにしても、環境の変化と共に努力をされたからこそ、の向上ですよね。

    過去には棚ぼたトップとか、タイミングが噛み合わずとかいろいろあったのでしょうが、番狂わせがおもしろい!とルキーニが言っていますが、その通りかもしれませんね。

    あ。ちなみに朝夏さんが大好きでした。ファンクラブこそ入っていませんでしたが。

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      いや本当、ウエクミ作品の瑞々しさあふれる作品ですよね。
      私は彼女の作品の初見が「神々の土地」でしたが、それはもう本当に感動する公演でした。
      前のブログでも書いたのですが、トップ就任時は「大丈夫?」みたいな心配の声もあった中で
      これだけ素晴らしい蝶へと脱皮するスターになるなんて、本当に努力の賜物ですよね。
      宙組にはそんな魔力があるのかもしれません…芹香さんにも頑張って欲しいです。

  3. 松本典子 より:

    「翼ある人々」好きすぎです。
    この作品は、劇場で見なかったのですが、当時、空席もあったのだとか、、、

    後悔しすぎです。

    緒月さんも素敵ですよね!

    • 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます‼
      宝塚バブル前ですもんねー、今なら絶対見に行きますよ本当に。
      緒月さん、実はきっちり最後まで見たのが今回が初めてだったのですが、とても素敵なスターさんでした。
      当時の演目もどんどん見ていこうと思います。