星組『1789』、少し前に無事観劇することが出来ました。
本当はあともう1回見る予定だったのですが、
西の公演中止に巻き込まれ、
まだ一度も見られていないという管理人の友人にお譲りしました。
だってこの公演、1人でも多くの人に見てもらった方が良いハイクオリティで、
かつそれが星組ファンというのなら、絶対に絶対に見ておいた方が良い!!!!
と強く断言出来る作品だったからです。
私が初見でここまで「おぉ!!」となったのは、
もしかしたら宙組『アナスタシア』ぶりかもしれません。
そんなマイ感想、綴っていきます。
上質なラブロマンスミュージカル
実は私、月組版『1789』を映像で見た時、あまりピンとこなかったんですよね。主人公は民衆代表のロナン、ヒロインは貴族代表のアントワネット。立ち位置が真逆な2人の男女を中心に描かれた群像劇、というのが『1789』のテーマのようですが、この娯楽スタイルって正直、ミュージカルとしては上級者向けだと思うんです。舞台を初めてみるような人、あるいは少なくとも宝塚に来る人は、ロマンとスリル溢れる分かりやすいラブストーリーが観たいもので、もちろん群像劇というジャンルがあるのは分かるけれど、とはいえ月組版は圧倒的にロマンス成分が足りないと感じたからです。というか、つまるところ本作は小池修一郎版『ベルサイユのばら』であり、フェルゼンとアントワネットが居て、オスカルとアンドレに位置する人こそロナンとオランプのはずなのに、オランプがおざなり過ぎたうえ、フェルゼンが当時ピヨピヨの暁千星というのは、人事事情に圧され過ぎというもの。単純な作品のクオリティより人事を取ってる時点で、それが宝塚だと分かってはいるものの、個人的には「うーん」というのが正直な感想でした。
で、本作の星組版。主人公はロナン、ヒロインはオランプ。フランス革命を舞台にした身分違いの恋を主軸に紡がれる群像劇、というロマンとスリル溢れる分かりやすいラブストーリーに構築され直した時点で、もう大・正・解!!薄暗い農村での理不尽な銃殺から物語は立ち上がり、町へ出てきて友との出会い、愚かしい宮殿の一幕、ヒロインとの出会いと喧嘩、敵にやり込まれ負傷するもヒロインと再び出会い、「助けてくれたお礼だ」のキスって、キャーーーーーーーーーーー!!!!!ってもんですよ。実に素晴らしい。
不思議なのは、カミーユたちとの兄弟宣言といい、オランプとのラブロマンスといい、時間の尺的には結構急な展開なのに、全くもって自然と観られたことです。これは整理整頓された演出面の勝利なのか、それとも星組生の熱演のおかげ(ボイパからのヤーーーー‼︎なんて冷めちゃうような演出も、溢れ出るエナジーのおかげで謎の説得力がありました)なのかは分かりませんが、何の抵抗も引っ掛かりもなく、すんなり2時間半没入することが出来ました。裏カップルであるフェルゼンとアントワネット、そしてルイ16世とのほろ苦い男女の駆け引きや、アツいからこそすれ違いが切ない革命家チームとのやり取り。1幕最後の怒涛の群衆幕も凄かったし、2幕はバスティーユからの怒涛の波状攻撃も物凄かった。そして銃声に倒れるロナン…そう、主人公は伝説の勇者でも王様でもなく、ただの一人の青年。時代という大海原の藻屑となり消えてしまうのでした・・・うう、分かっていても切なかったです。
キャスト別・さっくり感想
本当はじっくり書きたいのですが、観劇から少し間が空いてしまったのでキャスト別感想はさっくりと。
ロナン役の礼真琴。最・高!!分かっちゃいたけどロナンという雑草魂系熱血主人公が本当に良く似合う。なぜかアモーレ風の髪型にフード付衣装という奇をてらったビジュアルで攻めた『ロミジュリ』のロミオと違い、真正面で正統派な主人公像を作り上げていて「そうそう、これこれ!!」と観たかったものをそのまま提供してくれた感じ。全体的に何も知らない無垢な青年ではなく、少しスレた感があったのがまた良かったです。
オランプ役の舞空瞳。同じく最・高!!前のめりな体育会系少女だけど品もある、そんな理想のオランプ像だったと思います。ロナンとの掛け合いも良く、2人が惹かれ合い、互いに求め合う流れが実に自然で、納得出来るものでした。やっぱり礼真琴には舞空瞳なんだなと改めて強く実感しましたね。
アルトワ伯役の瀬央ゆりあ。彼女には珍しい「妖しい役」でしたけど、これまた見事に魅せてくれました。ルイ16世が同期のひろ香祐だったこともあり、陰謀家で性悪な弟感が自然に出ていて良かったです。
カミーユ役の暁千星。アグレッシブなダンスはより進化し、新曲も華麗に歌いこなしていました。個人的には詩ちづるとの並びが良くて、ほーーーっと思いながら見てました。これまで暁千星って娘役との萌えを生み出したことがほぼ無いと私は思っているのですが(個人的には『Arkadia』での美園さくらとの並びが好きでしたけど、あれは男役としては番外編ですものね)、今回は男役としてのカッコよさがちゃんと前に出ていて良かったと思います。
ロベスピエール役の極美慎。いや、本当に成長したな????!!!!スターとして一気に垢抜け、路線スターとしてメキメキ頭角を現した様が良く見えました。歌もダンスも相当成長しましたけど、何よりも芝居ですよ!!あんな緊迫感が出せるようになったんですねぇ…しみじみ。
マリー・アントワネット役の有沙瞳。さすがの安定感でした。前半はわざと幼く作っているんでしょうけれど、その分、後半戦における「女王の目覚め」がとの対比が良かったです。圧も強過ぎず、だからこそ最後の独唱が心に響きます。今まで本当にお疲れ様でした。
脇チームで個人的に好きだったのは、ネッケル国務大臣役の輝咲玲央ですかね。彼女の本来の持ち味はペイロールで、最近は狂人からスケベおやじまで色んな役をやってましたけど、こんな普通の、そして善良な役をさらりとこなしているのがツボでした。
同期だからこそ見えるもの
そして全体的に印象深かったのは、配役における同期芸です。例えば、ロナン、アルトワ、ルイ16世、ペイロールが全員同期だからこそ、今までのフランス革命物とは違う人間模様が見えた気がします。これまで宝塚におけるルイ16世って、結構な上級生が演じることが多かったじゃないですか?けど、本作は革命家チームと年が近く見えるほど若く、だからこそ優柔不断が故に革命の露と消えた宿命であることが個人的にもの凄くピンときましたし、全員の立ち位置がより鮮明になったと思います。
他にも、カミーユ暁千星とデムーラン天華えま、そこに印刷工として夕渚&天希が加わり、ここが98期同期カルテット。いやー、アツいですね。ここに蒼舞(朝の顔)&希沙(ロミジュリ愛)も含むと、まさしくダンサー選抜という感じで滾りました。
そして主要キャストが全員歌ウマという奇跡!!やはり海外ミュージカルは、歌えてナンボなんやなと実感しました。色々と計算しつくして極上のミュージカルへと昇華された星組版『1789』。まさに宝塚の本気を感じられる逸品だったと思います。ぜひ一人でも多くの方にご覧になって頂きたいですね。
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コメント
正直極美、苦手だったんです。ロミジュリ見た際、私が見た回たまたまだったのかもですが、明らか浮いてたんですよ、芝居。そのシチュでそれは変じゃね?という。「ああこれが(悪い意味で)噂の極美か」と思ったものです。
それがまー垢抜けたこと!自信に溢れているというか。愛月離脱→暁加入の影響なんですかね、もうピッカピカ。あのスタイルと顔に歌までついてくる(まだ上達するでしょうね)とか、正に未来のスターとしての風格を感じました。
暁も月のプリンスとしての面影は薄れ、なんというのでしょうか血と汗と涙?といいますか、熱量と勢いがもう。
話もわかりやすかったし、娘役含め皆全体的にレベル高いし、大満足でした。
中心人物である瀬央と有紗が抜け彼らの比重が増しますし、今後更なる発展が見れると思います。
嫁も「次のRRR宝塚まで見に行ってもいいぞ(本来宝塚観劇は雪のみ可)」というくらいには感動してましたねw
蒼汰様
何という、宝塚愛!ご自分のチケットを一人でも多くの方に見てもらいたいとお譲りするなんて。素敵すぎます。
今の星組だからできた、1789!
前回は若干ぼやけていたラブ要素、今回はわかりやすかったし、心の変化がよく伝わってきたし、悩み苦しみ、もがきながら、革命に散ってていった青春、よーくわかりました、
そして、路線スターの覚醒?!
有沙瞳の最後の出演作として、最高、多分、当面は見られないであろう?スーパー名作にしてスーパーキャスト。
全日程できなかった、でも何とか新人公演も一回はできた。しかし、もしかしたら、皆んなの思いの爆発は中止から蘇ったことで魂が宿ったかもしれない。
そして、本当に同期だから生まれる結束力や、絆が、更に作品にも相乗効果を与えたかもしれません。私も感じました。
千秋楽までどうか無事に、公演できますように。
東宝版の1789が大好きだったので(※演出的に(笑))、今回はそちらに準ずる形でよかったと思っていました。
主要キャストの歌唱クオリティはもちろん、熱量も高く、重ね重ね中止が恨めしいですね。
ただ・・・正直「宝塚にしてはレベルが高すぎで・・・大丈夫かな?」なんて、確実に余計なお世話なんですが、次回作以降や他組とのバランスを心配してしまう自分もいます・・・
1789星組版、本当に素晴らしかったと同意です。
私も西の中止をくらって一度しか観劇出来ませんでしたが、一度だけでも生で観る事が出来て良かったと思いました。
私は元々1789自体が好きで月組版も東宝版も全てを愛でておりますが、星組版は私の思う完璧な1789でした。
ショーがある為に幾つかカットされてしまったナンバーが惜しいです。
私としてはショー無しにして全てのナンバーを歌ってもらいたかったくらいです。
まぁ、宝塚にショーが無いのは文句が出そうですけど(^_^;)
正直なところ新曲の追加はいらなかったかなと思ったり。。。
「声なき言葉」やボディパーカッションがあるのは凄く嬉しいんですけどね。
本題ですが、
歌唱力もあり息の合ったベストキャストのトップコンビ二人だからこそラブロマンスも際立っていましたね。
また、私的MVPは有沙のアントワネットです。
仰せの通り、序盤の幼稚で視界の狭いアントワネットと、後半の女王の務めに目覚めたアントワネットの対比に、歌の表現も含めて感動しました。
ともかく星組版1789は本当に凄かった!
きちんスキルのある演者がきちんと役割に沿った表現をしてくれれば、1789であれアナスタシアであれ、元々良質ミュージカルなら演者の力と合わさって輝きを放ってくれるのだなと。
アナスタシアやポーの一族の時にも奇跡のキャスティングだと思いましたが、星組1789も同じ思いです。
宝塚ファンは勿論、そうでない方にも一人でも多くの方に観て頂きたいですね。
とは言え、私なら自分がもう一度感動を浴びたくて、とてもとても誰かにチケットを譲るなんて出来そうにありません。
いや、物凄い徳を積まれましたね。尊敬です。
たまーにある宝塚の奇跡のキャスティング歌唱力付き。
今度はいつ拝めるでしょうか。
その時を楽しみにしたいです。
毎回楽しみにしております。
久しぶりのコメントです。どうしてもお伝えしたくて。
「1789」東京公演が素晴らしいのは星組皆さんの努力と熱量!良い作品にしたいという思いの結晶と思います。
私は6月18日休演後最初の大劇場公演を観ることが出来ました。その時の感想は「え???1789ってこんなの・・・?」でした。個人個人の技術的なものは十分素晴らしいのに響かなかったのです。蒼汰さんもおっしゃっていた作品そのものが持つストーリーのブチ切れ感。唐突な心情の変化についていけませんでした。(厳しいコンデションでの公演再開だったと思います)
それが8月1日東京宝塚劇場は、B席(オペラグラス忘れ)にもかかわらず同じ作品とは思えないくらいビシビシと個々の配役心情、群像劇としての手応え、唐突だったはずの場面さえ滑らかに不自然さは感じず。全て別物でした。涙が思わずこみ上げました。
偶然取れたチケット。大阪からの遠征は色々無理もありましたが観ることができて本当に良かったです。
宝塚の生徒たちは常に全力で作品に向かいます。願わくは全ての組の全ての作品が、その思いが客席に伝わりやすい作品であることを切に切に願いながらの帰路でした。
1789配信拝見し、この星組版が初見となりましたが、とても面白かったです!
その後月組版の映像も観ましたがツボにハマるシーンが2組の中で全く異なり別作品のようでした!
星組は人物のディーテールやラブロマン、月組は群衆の迫真に迫る熱さがそれぞれすきでした。
星の配信は友人含め3人で観たのですが(ヅカファン2名、それに付き合いファンではないがいつも配信を観ている1名、全員1789初見)、全員が蒼汰さんの感想と真逆の反応をしたところがあります。ロナンのお礼のキッスのシーンは「えーーーーー!!!キッスはお礼にならない!!イケメンでもそれはダメ!!!」と大ブーイングでした笑笑
結果としてオランプちゃんが恋に落ちたのでよしとするか…となりましたがあんなにブーイングが出たキスシーンは初めてでした笑観ていたメンバーみんなことなこ大好きなんですけどね?「お礼」のワードが良くなかったのかも??
月組版は「お礼」に嫌味のニュアンスを感じそれはアリだなと思いました。
最大の心残りは輝咲ペイロールが実現しなかったこと…、まゆぽんペイロールが素晴らしかっただけに輝咲さん版も観たかったです泣
しかし何にしても、星組のフレッシュさ(革命チーム)と重厚感(王族チーム)が織りなすマリアージュが作品のクオリティをさらに高めた最高の逸品でした!