宙組『アナスタシア』キャスト別感想

個人的に久しぶりの傑作認定だった宙組『アナスタシア』。

これまでベタ褒め編とツッコミ所編という

2つに分けて感想を書いてきました。

 

【ベタ褒め編】

 

【ツッコミ所編】

 

最後はキャスト別感想編です。

さくさく参りましょう!!

 

キャスト別さっくり感想

ディミトリ/真風涼帆

 

なんと言うか彼女って、

常にビジュアルの最高得点を更新していきますよね。

 

普通トップスターって、

疲労と重圧からかどんどん萎びていくイメージがありますが、

彼女は常に今が最高得点。

つまりまぁ、ドチャクソイケメンでした。

 

民衆に紛れても一際目立つ高身長イケメン、それがドミトリー。

「顔がいいから許してる」という台詞に

全く違和感無く納得出来てしまうから恐ろしい。

 

役どころは詐欺師、なんだけれども

その心の裏に隠れた優しさが見え隠れするのが

彼女の芝居の良いところですよね。

 

『オーシャンズ11』のダニーも同様ですが、

悪い男像の中にそういう誠実さが立ち上がる様子こそ、

男役的美学の良心と言うもの。

 

主役として難曲を多数歌いこなした、その歌唱も合格点。

星組時代の彼女からは想像できない安定感、というか

一音一音丁寧に歌う独特な節回しは人を選ぶと思いますが、

私は好きです、単純に。

 

こんな大作の主役をすれば

「男役としての到達点」と言いたくなるわけですが、

まだまだ伸びしろを感じたのが面白かったです。

 

アーニャ/星風まどか

 

圧 倒 的 ヒ ロ イ ン 力 !!

 

以前、彼女の歌い方は松田聖子的だと書いたことがありますが、

(そして美園さくらが中森明菜的だとも)

もう笑っちゃうほど、松田聖子的。

 

すなわち、非の打ちどころのないキャンディボイス、

高音がスコーンとホールに響き渡るような歌声で、

聞いていて本当に気持ちが良いし、

たまにフラットになる音のズレすら愛嬌に感じる不思議。

 

真風たち男役チームが宝塚的魅力で魅せていたとすれば、

彼女は難曲だらけのナンバーを堂々と歌い上げ、

実力面で公演を引っ張っていたと思います。

 

また、ただ可愛いだけではなく、

掃除婦としてドシドシ歩く姿も実在的で良かったし、

そこから記憶が戻って洗練されていく「変化」も見どころの一つ。

 

まさにハマり役で、ビジュアルと芝居含め、

超正統派な圧倒的ヒロインパワーを証明した一作となりました。

 

 

グレブ・ヴァガノフ/芹香斗亜

 

余裕綽々2番手様として、

余裕綽綽に演じておられました。笑

 

役どころがイマイチ美味しくない立ち位置なので、

(詳しくはツッコミ所編を参照のこと。)

軍服、スーツ、黒燕尾というビジュアル的楽しさと、

1幕でのアドリブ場面が見どころかな。

 

アドリブはなぁ…あそこが彼女の見せ場だから仕方ないとは言え、

客観的に見るとグレブ像とかち合ってない気がしてならんのですが…。

(なんて書くとファンの方から「あれが正解!!」と怒られそうですけど。)

 

久しぶりに眉間に皺が寄る役だと思うので、

そういう苦悩をもうちょっと見たかったなぁというのが正直なところ。

 

よって個人的にはフィナーレでの

溜めていたエネルギーを爆発させるかのような彼女の姿が

一番見ていて楽しかったです。

 

もはやトップへのガツガツ感よりも、

「舞台を楽しんでます」という余裕を感じられるのが

今の彼女の魅力だと思います、が。

 

もはやその余裕綽々2番手という立場 す ら 役不足というか、

手持無沙汰な雰囲気すら感じて来たのが正直なところ。

最早男役として極まり過ぎてて、

「これ以上待たせるのもどうなんよ?」と本気で思っちゃいました。

 

ヴラド・ポポフ/桜木みなと

 

そんな余裕綽々モードの芹香斗亜の代わりに

ガツガツ枠を担当している桜木みなとは、

安定感と勢いが感じられる、

中堅として美味しい立ち位置にいたと思います。

 

3番手昇格後は一昔前の男役芸(つまりホスト芸)に傾倒、

シヴァーブリン、ベネディクト、エリアスと

捻くれた役が続いた中での、久しぶりの柔和なキャラ。

 

同じヒゲおじさんでも

同期の朝美絢(アラン・ショレ)が香川照之ぽかったのに対し、

ヴラドは八嶋智人ちっくなのが面白いですね。

落ちぶれたとはいえ貴族としての「品」が出ていました。

 

そんな面白おじさんな雰囲気で軽妙に舞台を引っ掻き回し、

実に魅力的なキャラに仕上げていたのは、彼女の腕によるものでしょう。

 

その返す刀で、フィナーレだと桜木みなとに戻り、

路線としての覚悟が決まったのかオラ芸も板についてきて、

階段上の目つき等とーーーってもカッコ良かったです。

スターとしての勢いをまざまざと感じましたね。

 

リリー/和希そら

 

前情報無しで観劇したため、

最初、本当は悪いヤツなのかと思って観ていたら、

(あんなドレスで夜な夜なネヴァクラブ行くくらいですし)

ただのイイ人で拍子抜けしました。笑

 

分かっちゃいたけど単純に上手い。

エレルギッシュでパンチが効いてて、

第2幕の勢いを引っ張ったのは、彼女の実力でしょう。

 

ちなみに、色んな人の舞台感想を読んだ際

「男役に見えないほど女性の役が板についていた」と多く拝見しましたが

私は逆にガッツリ男役が演じる女役の魅力を感じました。

本当、感想って人それぞれですよね。

 

蛇足ですが、1幕のモブダンサーの中でも超目立つ彼女。

キレキレの人がいるなぁと注目してみると、だいたい和希そらと言う。笑

隠しきれないオーラ(実力)が凄いです。

 

マリア皇太后/寿つかさ

 

まぁ、MVPですよね。

ただでさえ寿つかさ組長大好きなのに、

マリア皇太后役だなんて私を泣かせにきてますよ…。

 

あの『神々の土地』と同じ役だけれども、

その心のありようは全く別。

 

生き残ってしまった皇太后としての高貴な威厳と、

過去に縛られていることへの自嘲、諦め。

 

凍てつく彼女の心が閉ざされたところから物語は始まるわけですが、

その氷が解けていく様子が2時間半の公演を通じ、

目に見えて感じられていくのが、お見事。

まさにもう1人のヒロインを素晴らしく表現し切りました。

 

歌声はカスカス気味ですけれども、

それがまた味があって良かったと思います。

 

ロットバルト/優希しおん

 

第2幕バレエのシーンより。

本当にチョイ役でしたけれども、

とてつもない跳躍力で一目で彼女だと分かりました。笑

 

正直、あってもなくても良い役なのに

きちんとそれを与えられ、

そしてそれをモノにしているあたり

ファンとして「良かったねぇ」と思わずにいられません。

 

これからの活躍に期待したいです!!

 

海外ミュージカルは役が少ない…

 

ここまで書いて思いましたけれど、

やはり役が少ない…。

 

瑠風・遥羽・天彩・潤花の

いわゆるニコライ一家チームは出番があるたびに

「良かった、また出てきた!!」という気持ちになりましたとも。笑

 

役の少なさは玉に瑕ですが、

とはいえ面白い作品であることは間違いありません!!

 

宝塚に興味がありつつも見たことがない方にもオススメで、

東京千秋楽公演はライブ配信がありますので、是非見てみて下さい!!

という謎の立場からの宣伝で終わります。笑

 

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コメント

  1. あやこ より:

    ドチャクソイケメン!!笑
    めちゃめちゃ分かります!!

    なんというか、360度全方位、イケメン真風が溢れている。
    例えていうなら、四六時中キムタク、それも、40過ぎてさらに男前になっていくけど、なんでや?みたいな笑。

    ベタベタに作り込む香川と、素でいってますよ感の八嶋も、まさしく!
    (95期コミカルひげおじさん月城かなと編、こちらでも考えておきます)

  2. 宝塚ファンです より:

    あなた、ムラオですか。

    因みに以下のブログもお書きになっているのでしょうか。

    [外部リンク]

    同じ男性といい、文体といい、考え方(嫌いなジェンヌや観劇の感想等)といい、海外好きだといい、随分共通点がおありなので、率直に聞いてみました。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      違います。笑
      あちらの方がブログとしても宝塚ファンとしても大先輩でいらっしゃいますので畏れ多いのですが、
      Twitterでもあるまいしわざわざ別々のブログに記事を書き分けたりしないでしょう、普通の人なら。そんな暇じゃないですし。
      なお、コメントの仕様で外部リンクが外れてしまうのでコメント内容が変わってると思いますが御容赦下さい。

      • みわ より:

        はじめまして。
        Googleを開くといつも蒼汰さんの
        ブログが上がってくるので
        楽しく読ませていただいてます。
        すみません、私もまだ数回しか観ていないのですが、
        桜木みなとさんのヴラドは、
        貴族のフリしていた「ただの男」だと思ってました…
        ごめんなさい…。
        ディミトリーはどこにいてもイケメンでプリンス笑、皇太后にプリンス認定されなくてもペテルブルクの人々にすでに認定されてますからね笑笑

  3. こんちゃん より:

    蒼汰様

    いつも楽しみに拝読しております。配信専科の地方民です。

    いやー私、『アナスタシア』を1回生観劇しているんですけれど、

    てっきり、「パレードの馬車の上でほほ笑むアナスタシアと、群衆をかきわけて彼女を見上げるディミトリ」の場面を、舞台上でリアルに見たように錯覚しておりました(汗)

    なぜだろう、ロシア絵画のクラムスコイ作「忘れえぬ女」の絵を見た時の記憶とごっちゃになったのかしら・・・

    あの光景、うす暗い部屋でセリフで語られるだけで、実際の舞台では再現されていなかったのですね・・・某所で、実際に舞台で見た気になって感想文を書いてしまった・・・今さらどうしよう・・・

    ポポフとリリーも、過去に何かあったのはわかったのだけれど、何があったのかと思っていたら次のシーンに行ってしまったように思うのですが・・・ダイヤの時計の行方はどうなったのでしたっけ?

  4. レモン より:

    キャストの皆さん素晴らしかったですよね。

    グレブは初演キャストがあのラミン•カリムルーですから、
    「ラミンが歌えばなんとかなるだろう」みたいな役なんだと思いますが、
    芹香さんも歌唱とオーラで見事になんとかしちゃってて凄いなと思いました!
    立ち位置が微妙と言われるのも分からなくはないのですが、「恋に悩むジャベール」なんてなかなか萌え要素詰まってませんか、、?設定勝ちだと思います(笑)

    桜木さんのヴラドは、胡散臭いのにチャーミングだし何故かおじさんの色気もあって芝居力が光ってました。
    もっと別格っぽくなったり、カッコいい役が見たかったなと思わせてもおかしくない役どころなのに、とても愛らしく路線スターの役として魅力的に演じながら物語上の役割も全うするというバランスが絶妙だなと。

    この2番手3番手役はこの2人が自力で魅力的な役にしていた印象ですので、再演するとしたらどうなんでしょうねえ、、、??今の宙組だから傑作にできたと思うのは贔屓目でしょうか。笑

    あとはイポリトフ伯爵の凛城さんや
    ゴリンスキーの美月さんの登板も
    大正解、役が少ないとはいえ細部にいたるまでナイスキャスティングにベストパフォーマンスだったなと思っています。

    アナスタシアが好きすぎてやたら連続で書き込みしてしまいました、すみません。

  5. MS より:

    いつも、蒼汰さんの考察と同時に、コメント欄を読むのも楽しみなんですが、こんちゃんさんの、過去のパレードの場面を舞台上でリアルに見た錯覚をした、というのに、思わず私も!と(笑)
    私は、やはり1番好きな楽曲の、In a Crowd of Thousands-幾千万の群衆の中-の歌詞で、その光景が見えました。私もはっきり見えたんですよね、何だったんでしょう(笑)
    それから、宝塚ファンですさんの、あなた、ムラオですか?には、驚きました。
    どちらかというと、同じ男性でも、表現は対照的だなと思ってましたから。

    アナスタシアをメインキャストが全員ここまで歌いこなし、感動を与えてくれた、宙組の皆さん凄いです。
    歌というと、どうしても望海さんの雪組と思われがちですが、確かにファントムなんかスタンディングオベーションしかけましたが、トップコンビが突出していて、他は普通か怪しい方がちらほら。最近は望海さんの圧が強すぎて、見ていて疲れることも(望海さんは大好きです)。
    そういう意味では、私は、全編通して何のストレスもなく、耳福で楽しめるのは宙組が1番だと思います。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      コメントありがとうございます!!私もまさか過ぎて笑っちゃいました。笑
      あちらの方がブログ歴だいぶ先輩(先ほど調べたら私より5年以上も長く運営されている模様)なのになんで?って思いましたけど、
      ライトファンあるいは最近ブログ界隈をご覧になり始めた方は、これまでの経緯なんて知らないんだろうなと感慨深くなりました。
      耳福という意味では、これまでのどの作品の中でも『アナスタシア』が一番の耳福だったかもしれません。
      団体芸としてのコーラスの魅力を初めて気づけて楽しかったです!!

  6. ちくわ より:

    アナスタシア感想編、ありがとうございます!
    アテガキかな?と思うほどのハマりっぷり!とりわけ、アーニャ・マリア皇太后・リリーと女性キャラのインパクトは凄まじく。特にリリーさん、劇場からの帰り、近くを歩いている人たちが「皇太后のお付き役の人が」「ソラカズキが」と口々に和希リリーを絶賛していたのを思い出しました。男役ならではの押し出しの強さがありつつ、きれいで仕事のできそうなサバサバ自立したお姉さまで、でも昔の男に絆されちゃう面もあり…いい塩梅だし、上手いですよね。
    和希さん優希さんはいろんなダンスシーンに出ていましたが、踊るとすぐに分かる。(笑)コロナの影響か大勢で踊るシーンはあまりなかったですが、その分一瞬にかける熱量に圧倒されました。ダンスやソロパートで登場する方々みんな上手い。
    役が少ないながらも、却って組の層の厚さを感じた公演でした。
    長文失礼致しました。

  7. まちゃん より:

    蒼汰さんこんばんは。

    アナスタシアの感想記事とっても楽しく読ませていただきました。
    宝塚初観劇が宙組のオーシャンズで、宙組が大好きになったので、アナスタシアも劇場で観たかったのですが、病院職員のため自重せざるを得ず…。公式ホームページに載っている星風さんのピンク色のドレス姿が素敵すぎて、悶々としていました。

    が、『傑作』という感想やコメント欄も拝見して、これはDVD(初)を買わねばと決めました!今の宙組の集大成を観られるのが楽しみです。ありがとうごさいました。

  8. こいと より:

     こちらのブログの考察やコメント欄を時折拝読しておりますが、今回のコメント欄の「あなたムラオ?!」に、笑ってしまいました。確かにソウタさんの文体の雰囲気、考察、その他色々と…。ムラオさんご本人とは思いませんが、弟さんのように感じられますね。
     アナスタシア、トップコンビから4番手までみんな歌えて、宙組のコーラスも素晴らしかったですね。
     しかし役が少な過ぎる。贔屓の組で演らなければ、観る気はおきないかな。再演はロミジュリと同じ。トップコンビ次第だわ。

    • 蒼汰 蒼汰 より:

      あちらのブログは私が出戻った頃から運営されてますし、
      後追いニワカの私からしたら超大先輩なので、同一人物に思われるなんて光栄です。笑
      ぶっちゃけトップコンビありきな部分はありますよね。再演はそれこそ役替わり祭りにするかもですねー。