宙組『Hotel Svizra House』配信で拝見しました。
素直に、面白かったですね。
途中まで、こりゃベタ褒め感想書かなきゃなと思っていたのに、
私情により2幕の途中15分程中抜けすることになりまして。
しかもそれがこの話のキモかつ評価を分ける部分っぽい感じで、
(すなわち、芸術最高!!のリフレイン場面)
そこを見ずして感想を果たして書いて良いものなのか、という。笑
よって本稿は感想「のようなもの」として
思ったことを書いていこうと思います。
イケない男とのラブロマンス
さて、この『Hotel Svizra House』は
実に宝塚の様式美のような作品だったと思います。
それはズバリ、イケない男とのラブロマンス。
表の顔はロンドン駐在の外交官、
裏の顔は英国情報部の為に働くスパイキャッチャー。
死と隣り合わせの危険な任務に携わる、スーツが似合い、
小粋なジョークも飛ばせる、どこから見ても完璧な美男子・ロベルト。
彼はスイスのホテルで失業中のバレエダンサー・ニーナと出会い、
最初は任務の一環で彼女に近づきながらも、
いつの間にかロマンスの花が咲いて…、という作品。
古き良き宝塚の物語の美しさとは、
現実世界では絶対に近づかない悪い男との美しいラブロマンスを
自己投影させてくれる点だと私は思うのですが、
本作はそれを完璧に実現していましたね。
その意味で、真風涼帆は本当にピッタリな役どころでした。
スーツ姿もソフト帽も非の打ちどころのない美しさ。
なのに男としてどこか隙(人間味)がある感じが、また良いんですよね。
今の宙組は古き良き宝塚も再現、なんてよく評していますが、
大空祐飛時代の宙組アダルト路線への回帰も感じました。
また、本作がヒロインお披露目となった潤花も、素敵でした。
雪組ファンとしては彼女を嫁に出したような気持ちなのですが、笑
真風涼帆との相性、良かったですよね。
いわゆる「作画が同じ」というか、
大味なのにシックな雰囲気が良く似合いますし、
相変わらずの声美人でアダルト系ヒロインを上手く体現していたと思います。
新生宙組の新たな方向性を見事に打ち出した作品だったな、
というのが全体を通しての個人的感想です。
植田景子VS上田久美子
さて、少しまでまで宝塚で「ウエダ」と言えば、
上田久美子ではなく植田景子だったわけですが、
猛烈なウエクミ旋風のおかげで最近は押され気味だった植田先生。
が、私は本作で彼女の宝塚的美意識による表現力の凄さを
改めて実感したのでした。
真風と潤花のラブロマンスの陰で織りなされる本作のテーマは、
ずばり「芸術最高!!」ですよね。
そしてこれ、望海&真彩退団公演であった上田氏による『fff』と
全く同じテーマが本筋として流れているわけです。
宝塚らしからぬ物語展開と冷え冷えとした舞台演出(最後除く)で
回りくどい言い回しで観念的にメッセージを送った『fff』と、
宝塚的美意識による装飾を華美に施した物語と舞台演出で、
とにかくストレートな言葉で喋らせる『Hotel Svizra House』。
なんともまぁ、2人のカラーの違いが良く出てるなと思いながら
舞台を拝見させて頂きましたが、
個人的にストンと胸に落ちたのは『Hotel Svizra House』だったなぁと。
前述の通り、一番しつこい部分を見逃してますし、
『fff』は退団公演という縛りがある作品でしょうから一概には言えませんが、
宝塚的美意識との整合性が上手いこと取れていたのと、
メッセージは1つの直球一本勝負なところが好感度高いのかもしれません。
もちろん、どちらが良い悪いは当然ながら好き好きですけれど、
(今作のような直接的表現は説教臭いと思う人もいるでしょうし)
宝塚を代表する女流演出家2人が同じテーマで作品を作ると
こうも違うものが生まれるのか、と思いながら見るのも面白いです。
泉堂成の抜擢に大喜び!!
そして、宙組メンバーの充実っぷりたるや凄いですね。
芹香斗亜はイケメンだったし、
桜木みなとや遥羽ららの安定感も良かった。
あと専科ですが、万里柚美の美しさは息を飲むほどでした。笑
個人的に嬉しかったのは、桜木演じるユーリーと仲の良い(?)
バレエダンサージョルジュ役に泉堂成が抜擢されたこと!!
実は私、最近は各期に1人ずつ推しを作ろうキャンペーンをしてまして、
105期生は泉堂成を応援しようと軽く宣伝してましたね。
『FLYING SAPA』では彼女の見分けがつかなかったので、
今回はガッツリ目立つ立ち位置で出てきてくれて嬉しかったー。
ということで宙組充実期の象徴的作品になりそうな『Hotel Svizra House』。
映像化されたらまた見たいなぁと強く思う程の、個人的佳作でした。
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コメント
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
「fff」と「ホテル・スヴィッツラハウス」私は、実はどちらも手放しでベタ褒めとは言えず・・・まだしも「fff」のほうが感覚としてついていけました(汗)
同じ芸術賛歌ですが、上田先生のほうが理路整然としているので、脚本を読むだけでもウエクミの言いたいことについていける。
植田先生は、耽美が勝って、ストーリーのミステリ的構築とかラストの展開がちょっと甘いような(時計をカパッと開けたらけっこうデカい証拠がありました!とか。どんな時計なの)
さらにこれは超個人的な思いなのですが、あまりゲージュツゲージュツと言われると、「こんな高尚な、人間精神の深淵を表現する芸術を理解しているワタクシ」からの「あなた、芸術がわからないの?感性が乏しい方ね」という上から目線を感じて、
「わたしは子供のころから親に連れられてバレエ鑑賞をして、毎年夏には避暑地に滞在するような生活をしていないから、高尚な芸術を感覚で理解することができません!」と自分のコンプレックスが疼くのです。
まずは潤花ちゃん、お披露目公演の成功おめでとうございます。
宙組はアナスタシアで完璧に安定感のある組体制だと感じていたのが、色々あって複雑な気持ちでしたが、真風涼帆と潤花、見るからにお似合いで、雪組最後の出演作、炎のボレロよりずっと落ち着いて大人っぽく、素敵でした。
植田先生が宙組生に宛てて書いたというだけあって、他の配役もよかった。
私は特に、瑠風輝の活躍が印象的でした。
物語は次回作シャーロックへの期待にも繋がる雰囲気もあり、コロナ禍へ芸術分野のメッセージもありつつ、ロマンチックなラブサスペンスなところが宝塚的で良かった。
両ウエダ先生の違いは、最終的に自分側に持ってくるか、宝塚的にまとめるかの違いかなとも感じます。
比べるものではないし好みですが、私はいく通りもの捉え方ができるfffの方が好きです。
が、今の宙組にホテルスヴィッツラハウスは、とても良かったと思いました。
私も素直に面白かったです。
宝塚のオリジナル作品では、久々に、また観たいと思える作品でした。
説教くさいという感想をお持ちの方もいらっしゃるようですが、例えば親が子供に何か伝えようとしても、それをお説教と受け取られてしまう事はよくあります。でもそれは「伝わった」という事でもあると思います。どう感じるかはその人次第です。感じ方は自由で、まさにそれが芸術ですよね。一度伝わったメッセージは、時を経て、また違う感想が生まれる事もあるものです。私は、ウエクミファンでしたが、fffは、私の感性とは合わなかったので、本当に人それぞれですよね。
とにもかくにも、この作品を生で観たかったなと残念でなりませんが、無観客という事で、画面の向こうにだけ届けてもらえた
贅沢な気分は味わえました。
潤花ちゃん、ファンに擬似体験させる事が出来るなかなか凄い娘役さんだと思いました。もっとこのコンビを見たくなりました。
こんにちは!いつも楽しく読ませてもらってます!
休演が延長されそうで残念ですね。この間の99期特集、大変楽しませてもらいました!!!立場上注目されにくいけど実は素敵なスターさん達を取り上げてもらい、大変嬉しかったです!
そこでリクエストなのですが、是非98期5人も特集して欲しいです!研10になり路線としてスターとして正念場ながらそれぞれ輝く5人を蒼汰さんの視点でまとめて欲しいなと…
余裕があればよろしくお願いします!
こんにちは。
いつも楽しく、拝見しています。
主演男役・真風さんから、2番手、3番手の並びが美しくて。続く下級生の皆さんも、実力、魅力を、こうした別箱公演では、埋もれることなく、引き出せてもらえているようで、感動です。
本当に、宙組は充実していますね。
明日は、バウでの和希さん主演・夢千鳥の配信を行っていただけるし、感謝、です。
別箱公演を終えて、宙組生全員での(どうか、A・B分担にならないように…)、次回本公演が、楽しみでなりません。
素晴らしかったですね!宙組!!
ラストパーティー、アンナカレーニナ、ハンナ、フェアリーテイル等、一場面は極めて美しく印象に残るのに全体としてはあまり好みに合わない…というのが私の植田景子先生の印象だったのですが、今回は素直に感動しました!もちろん宙組への欲目もありますが…(笑)
潤花ちゃんお輿入れいただきましてありがとうございます。本当に声がいいですよね、彼女。声に表情もあるし、お衣装の着こなしも素敵でした。デュエダンもスケール感があって見ごたえありましたねー!
そしてアナスタシアではベッドがあっても何も感じなかったのに、今回は舞台にベッドが現れた瞬間、こ、これは…!と思いました。まかまどとは違う雰囲気のコンビで、改めて真風氏の男役としての幅を見せつけられた思いです。
芸術讃歌のド直球ストレートさも良かったです。キキちゃんが熱く、すっしーさんが枯れた心を蘇らせるように暖かく、ららちゃんが切なく、3者とも違う巧みさをもって表現し、受ける真風の心の底から湧き上がる抑えきれない感情の表現。星組あたりなら同じ熱力と質感で畳み掛けそうな所を、引き算して描写する辺りが宙組の好きな所です。
今回は下級生も台詞があって嬉しかったです。泉堂成くん、素晴らしいダンサーとキラキラ感!新公あればロットバルトだったんでしょうか。今後も注目したいです!新しい子が活躍するとワクワクしますねー!
宙組次作も本当に楽しみです。