スカイステージ放送された「Dream Time 暁千星編」にて、
MCを務めていた英かおと、礼華はるとの共通点として
暁千星版『A-EN』に出演していたことが話題に上っていました。
自分も懐かしい気持ちになり、
久しぶりにこの公演を見返してみると、
色んな意味で面白い発見が多々ありましてね。
ということで2021年の今、
この作品を見返したからこそ気付いたことを
まとめていきたいと思います。
路線候補がてんこ盛りの『A-EN』
月組公演『A-EN』、主演は朝美絢(研7)と暁千星(研4)が務めた
「バウ・ワークショップ」です。
第1幕はプロム・レッスンを舞台にした芝居。
第2幕は月をテーマにしたレビュー公演という2本立て。
同時公演は『DRAGON NIGHT』『Wonder of Love』『オイディプス王』と、
路線スターたちが分散されまくった結果、
『A-EN』は新公学年(研95~研101)の生徒たちでほぼ構成。
2公演20名ずつ合計40名が出演と、
まさに若手育成のために行われた公演でした。
キャスト陣は豪華、というよりも
当然ながら後の新公主演者がたくさんいます。
朝美絢編は、2番手が輝月ゆうま、3番手が夢奈瑠音で、
晴音アキ、叶羽時、紫乃小雪、風間柚乃、そして当時男役の天紫珠李。
暁千星編は、2番手が蓮つかさ、3番手が英かおとで、
海乃美月、美園さくら、蘭尚樹、礼華はるが出演。
ね、豪華でしょ?
そして今見返すと人事的にも色々面白い。
例えば、暁千星編では海乃美月がガッツリヒロインかと思いきや、
第2幕では美園さくら(当時研3!!)が中心で歌い踊りまくっていたり、
同じ99期生である英かおとが、前述の通り3番手に大抜擢。
月組99期は輝生かなでが1番手だと思っていたので、
この時点ではまさか英かおとの方が推されていたと知らずビックリ。
朝美絢編は、輝月&晴音との95期トリオのバランスの良さを感じながら、
風間柚乃の目を惹く感が凄い。
この後すぐにプッシュモードに入るのも分かるというもの。
結局誰が新公主演&ヒロインをしたかが判明している今、
その人たちは皆「こりゃ抜擢されるよな」という輝き方をしているので、
見返していて答え合わせをしている気持ちになりますね。
『A-EN』は色んな意味で意欲作
舞台の内容に目を向けてみると、
第1幕は朝美版、暁版の2つで1つ。
まさに鏡合わせのように対照的な作品になっています。
ARTHUR VERSION(朝美版)は学園一のイケメンが
残念女子を究極の美少女する為に「レッスンする」物語。
ARI VERSION(暁版)は転校生の残念男子が
学園一の美少女から究極のイケメンになる為に「レッスンされる」物語。
朝美版がイケメンにドキドキさせられる私!という作風だとしたら
暁版は未来のイケメンの卵を私が育てる!という作品であって、
どちらも宝塚におけるスターとファンの関係性と二重写しになっていて、
観客はそこにグッとくる構図になっているという意欲作。
第2幕は少ない人数でレビュー公演をやるからか、
若手スターたちが最初から最後まで出ずっぱり!!
当時最下級生である101期の礼華はるが
女性に扮した暁千星と一緒にガッツリ踊るくらいですからね。
みんな汗だくで歌って踊り、まさに若手育成!!という感じです。
作・演出はあの上田久美子と同期の野口幸作。
1幕2幕ともに野口氏のアイドル趣味が全開ですけれども、
ここまで突き抜けてくれると見応えありますよね。
野口氏はオリジナル作品3作目であるこの『A-EN』で、
ついに自分の得意分野を掴んだ(そしてそれが評価された)のでしょう。
翌年にはこの路線を突き詰めた
星組『THE ENTERTAINER!』からのスペクタキュラー3部作が始まり、
『ON THE TOWN』『花より男子』と続きます。
彼の作品は宝塚的ではないと批判されることもありますが、
そもそも宝塚と少女漫画、
あるいはアイドル的キラキラとの親和性は高いですし、
全力で突き抜けてくれる点を私は評価したいです。
よって個人的にはウエクミとともにツートップで安心している作家であり、
そんな彼の原点こそがこの『A-EN』であると言えるし、
バウが若手演出家の育成の場でもあることを実感しますね。
「バウ・ワークショップ」再開しないかなぁ
久しぶりに『A-EN』を見て、
若手スターと演出家たちががむしゃらに突っ走っている輝きに
見ていてワクワクしちゃいました。
100周年以降の宝塚は動員安定の観点から
バウホール公演も1つの興行としてしっかりした作品作りをしていますから
今作のような「ワークショップ」は行わない方針なのかもしれません。
けど見たいなぁ、こういう作品。
新人公演が出来ない代わり、という話でなく、
99期生以下も面白そうなスターがたくさんいるじゃないですか。
個人的に微妙路線だった朝美絢が
頭角を現したのがこの『A-EN』だと思ってるので、
それこそ本路線枠でない若手にとっての
貴重なチャンスになるかもしれないわけですし。
というわけで1ファンとして
バウ・ワークショップの再開をひっそりと思っている蒼汰なのでした。
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コメント
蒼汰様
いつも楽しみに拝読しております。ライビュ専科の地方民です。
バウは演出家の先生にとっても修行の場、ワークショップ的な試みはどんどんやって欲しい派です。
で、最近の若手の先生の作風ねえ、「PRINCE OF ROSES」は未見ですが、聖乃さんはスカステで「ぜひ薔薇戦争について予習をなさってからおいでくださると、より楽しめるかと」とおっしゃっておりましたが、
案の定SNSでファンから「難しい、わからん、贔屓イケメン!」みたいな感想が飛び交うのを見ると・・・
デビュー作から、客が薔薇戦争について予備知識があるのを前提に作劇していてよいのだろうか・・・アメリカ人に応仁の乱について勉強してから来いと言うようなものではなかろうか。
最近の若手の先生方、「舞台上で歴史的に不正確な表現はしたくない」と心配しているのか、舞台上で固有名詞がマシンガンのように飛び交っておりますが、
柴田先生の「うたかたの恋」初演では、フランツとエリザベートは「皇帝」「皇后」としか呼ばれていなくて、舞台の上では主人公たちの恋路をみっちりと書き込み、
政治的事情については「裏で何かが動いているんだろうな」と客が察してくれればOK,というくらいの扱いだったんですよね。
客は歴史の勉強のために宝塚を見ているわけではなかろうと思うので、そういう舞台上の描写についての濃淡というか、力の入れどころの塩梅も学んで欲しいです。
最近のウエクミ先生もなあ・・・「fff」も「難しい、わからん、望海さん歌うま!」という感想が飛び交っておりますが、ル・サンクの脚本を読む限り、世界史Bの教科書を読んでいないとわかりづらい、逆に言えば世界史Bの教科書を読めばわかる程度の話になっている。
もちろんこれは脚本の話で、舞台での演出があって完成するわけですが、シンプルなはずの話が、舞台上の情報過多で客の頭に「???」が飛び交っているのでは?と心配であります。
「fff」は東京千秋楽配信までお預けですので、蒼汰様、観劇されましたら、感想記事をお待ちしております。masa様のホンネ感想もぜひ。
私も最近A-ENのARI verを観まして、蓮つかさ最高だな!英かおとも良いな!となりました。
ありちゃんの行き過ぎたオタク演技だけが良脚本を壊してて残念で、ぜひディズニーの「イケてる私とサエない僕」を視聴してから演じて欲しかった・・・宝塚でいうとPR× PRinceの永久輝レベルに留めて欲しかった・・・研4だからしょうがないのか
愛月さん(好きです)のラスプーチンしかり、路線として超えちゃいけないラインってあるよな、と思いました。
ところで、多くのブログなどで「A-ENは0.5回」と言われてますが、普通のW主演や歌WSと違い、単独主演で劇とショーを演りきっていて驚きました。これって1回とカウントしてはダメなものでしょうか?
バウが2回ある感じで、より多くの若手が活躍できた良い試みですよね。私もぜひ再開してほしいです。
コメントありがとうございます!!
記事では触れませんでしたけど蓮さんの上手さ、カッコ良さも際立ってましたよねー。
暁さんはやり過ぎ感も否めませんが、当時は加減がよく分からなかったのか全力で残念芝居してるのもまた一興かなと。笑
カウントとして0.5なのは日程的な意味というかチケット負担の割合的な部分もあるのかもしれません。
ただおっしゃる通り、がっつり劇とショーをやり切ってますので「0.5」と数値で表現できない程の経験は積めたんじゃないかと思います。
こういう形式のバウ公演良いと思うんですけどねー。
お返事いただけるとは!ありがとうございます!
なるほど、新公・バウ・東上のようなカウントは、
これくらい大きな会場できちんと芝居の主役ができるという能力的な経験値というより、
これくらい大きくてチケット代も高くなる会場を全日程埋めることができるという動員実績をカウントしている感じなのですね!
なんとなく前者のように捉えていたので、理解が深まりました。
カウントが減ってしまうというトレードオフが無ければ、どんどんやってほしいところですが…難しいものなんですねぇ。
もちろん経験的な意味もありますけどね。どちらも合わせて、というか結局は主演を1人ではなく、2人で任せられているからカウントとしては0.5になってるんだと思います。
つっても本命の方々は結局それ以上にカウントを増やしていくので(明日海龍彩風暁など)、ここで「0.5」扱いされてもあまり関係無いのだと思います。
バウ・ワークショップの再開、是非実現してほしいですね。中堅以上の方々にとっては、このコロナ禍の公演中止も、自分を見つめ直すいい機会だったかもしれませんが、若手にとっては見つめ直そうにもまだ見つめ直す物がない、まだまだがむしゃらに頑張らないといけない時期ですからね。
花組以外はしばらくバウに若手主演がない事が残念です。
A- ENは未見なんです。祐飛さんの組替、瀬奈さんの退団の後は、少し月組から離れてしまったのもありますが、1789のフェルゼンにショックを受けまして、ありちゃんは頑張ってましたが、抜擢にも限度があると、月組Pに拒否反応が出てしまった時期でしたね。あの頃のありちゃんを観るのが辛くて辛くて、月組は本公演のみ、ご縁があったチケットで観劇してました。
でもA- EN、あーさの分はいつか観てみようかなと思いました。
そして、若手演出家のみなさんも、バウは大事ですよね。私は柴田作品は苦手なのですが、案外男性に人気ですね。男性演出家が思う一途が女性にとってはストーカー的にとられたり、人により捉え方も十人十色。柴田作品の再演が続きますが、柴田作品を継承する若手演出家も出てきていいのかもしれませんね。